鳴り物入りで登場したTBSの新報道番組が、苦しいスタートとなった。夕方6時台の民放ニュースでは視聴率が最低、7時のNHKニュースとは、なんと10ポイントも引き離された。バラエティの小林麻耶アナ起用では、中高年のハートを射止められなかったのか。
視聴率が前半5.9%、後半7.1%
デビュー報告をした小林麻耶アナのブログ日記
やれ、どんなふうに変わるのか、と見た人もいたに違いない。
TBSを退社してフリーに転身した「マヤヤ」こと小林麻耶アナ(29)。その報道キャスターデビューとなる新番組「総力報道! THE NEWS」の前に、こんなCMを繰り返し見させられたからだ。
「私は変わります。TBSは変わります」
ふたを開けて、いざ初日の2009年3月30日。夕方5時50分から始まるこの大型2時間番組で、麻耶アナはまず、「番組が皆さんの生活の一部になれるよう頑張ります」とやや硬い表情であいさつ。公約通り、そのスマイルを封印してもキャスターらしく振る舞うのに努めていた。
バラエティ番組では、とびきりの笑顔を披露しているマヤヤ。その表情と比べて、痛々しく感じた向きもあるかもしれない。また、「Qちゃん」ことマラソン五輪金メダリストの高橋尚子さん(36)も、スポーツキャスターとしてデビューし、麻耶アナと豪華タッグを組んだ。
しかし、TBSが意気込んだこの報道番組は、初日は、関東地区の視聴率が、前半5.9%、後半7.1%。夕方6時台の民放4局のニュースでは、視聴率が最も低く、この日17.0%の視聴率だったNHK「ニュース7」には、10ポイントも引き離されてしまった。WBCや映画「おくりびと」で吹いた追い風が途切れてしまった形だ。
麻耶アナは、話題になったNHKの「テレビの、これから」で、スマイル改造に取り組む姿が異例な形で公開された。新人時代に戻った気持ちだったといい、自らのブログ日記で、番組終了後の3月31日未明、こう本音を漏らした。
「初めての放送、THE NEWSでは、とても緊張してしまい・・・カチカチになってしまいました。伝わってしまいましたね。ごめんなさい(><)」
「視聴率が特に低いわけではなく、痛み分け」
かつてはドラマやバラエティの独壇場だった民放のゴールデンタイム。それが報道番組に力を入れるようになったのは、若者のテレビ離れによってターゲットが中高年になったことが大きいとされる。NHKのニュース番組が中高年の支持を集めているのに、民放が目を付けたわけだ。
しかし、放送評論家の松尾羊一さんは、夕方のニュースは、視聴率が低くて当然だとみる。
「夕方は、サラリーマン、OLが帰っておらず、主婦か定年退職者ぐらいしか見ないので、みなだいたいネタが決まっているんですよ。午前中に取材した動きや絵のあるホットニュースを流すわけですが、主婦に関心ありそうなデパ地下やゴミ屋敷の話題など、各局が共通して追っかけるようなものばかり。民放の中でTBSの視聴率が特に低いわけではなく、痛み分けということでしょう。2時間にして宣伝を打っても、TBSだけ視聴率を稼ぐことはありえませんね」
さらに、バラエティ出身の小林麻耶アナ登用については、手厳しい見方だ。
「40代以上の主婦や定年退職後の高齢者は、バラエティタレントは『訳が分からない』と興味ありませんよ。いつも同じことをやっているので、飽きられてしまっていることもあります。共同通信出身の男性キャスターと2人だけでは、今ひとつ華がありません。このままいけば、久米宏さんもう1回、ということになるかもしれませんね」
NHKニュースの視聴率がいい理由については、「時計の針みたいに、その日の区切りとしてNHKにチャンネルを定時に回す習慣ができているのでしょう。それなら、客観的にストレートに流すだけでいいわけです。強固な全国ネットを持つNHKには、情報収集力でもかないません」と分析する。
そんな中で、夕方の民放ニュースに活路はあるのか。松尾さんは、こう言う。
「報道番組は、安上がりでできるということもあるのでしょうが、自局アナを育てていないから、こういうことになるんですよ。また、番組内容も、生ものを独占中継したり、リポーターを使った特集に力を入れたりするなどしない限り、視聴者をもっと獲得できないでしょうね」