株価動かすネット掲示板の「口コミ」 早大生チームの調査で判明

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   株取引をインターネットで行う個人投資家が増えているなかで、ネット掲示板に掲載されている「口コミ情報」が株価に影響を与えていることが、早稲田大学商学部の学生チームの調査によって明らかになった。インターネットの普及によって、消費者がネット情報で購買意欲をかき立てられるように、投資家もネットの情報をもとに投資行動を起こすと考え、検証した。ネット掲示板の投稿(カキコミ)が増えれば株の取引量も活発になるが、その半面、「誤った情報に引きずられる可能性がある」とも指摘している。

カキコミで増えた取引量は月間出来高の11.7%にのぼる

「そろそろ売りですね」
「権利落ちの日です。続伸は好ましいですが、もう調整局面ですよね」
「もう少し辛抱してほしいな」

   こういった「口コミ情報」が、株取引に大きな影響を与えている。早大商学部の広田真一教授のゼミに所属する4人は、ネット掲示板の投稿と株式市場の関係を検証したいと考え、「インターネット掲示板が株式取引に与える影響―実証分析」をまとめた。

   日経225に含まれている企業(合併、上場廃止などを除く)を対象にサンプルを集め、「インターネット掲示板の投稿数が増加すると、株式の取引量の指標である出来高も変動するのでは」という仮説をたてて、2007年度のYAHOO!ファイナンスの掲示板にあるカキコミを分析した。

   それによると、掲示板へのカキコミが1件増えるごとに、株式の出来高は2万3000株増えた。07年度は1銘柄あたり月平均610件のカキコミがあり、カキコミの情報によって増えた取引量は1銘柄で1412万株にも上り、月間出来高の11.7%を占めた。

   見方を変えれば、ネット掲示板の情報がなければ、全体の取引量のうちカキコミの影響を受けてなされた約12%もの取引もなかったことになる。

   レポートでは、「ネット掲示板のカキコミ情報が取引量に与える影響は強く、無視できない」と報告。広田教授も、「掲示板のカキコミが株取引に影響を与えていることは確かだ」とお墨付きをあたえている。

規模が小さく知名度の低い企業の場合に、掲示板の情報を利用

   いまや個人投資家の大半がネット取引を利用している。そのため、売買を発注する直前に、確認の意味を含めてネット情報を見る投資家は少なくないはずだ。

   一般的には、個人投資家は新聞やテレビなどから情報を得る。ネット掲示板の、非公式な口コミ情報はその補完的な役割として使われ、マスメディアに載りにくい規模の小さな企業や知名度の低い企業の情報ほど、ネット掲示板の情報を利用していることがわかった。

   広田教授は「大企業の情報は豊富だが、中小企業の情報は少ないので、投資家はそういった銘柄の売買に(ネット情報を)役立てているようだ」と話す。

   学生チームはカキコミの1件1件の内容を分析しているが、ネット情報の「信憑性」には言及していない。ネット情報は「信憑性に乏しい」といわれ、掲示板を悪用した株価操作が心配されているが、この点については「違法であるため、(悪用の)可能性は非常に少ない」とみている。

   ただ、広田教授は「情報の信頼度が高まれば株価の安定的な売買に貢献するでしょうし、あまり信憑性がないとすれば、株価を大きく揺らす可能性はあります」と話す。

   レポートでも、ネット掲示板が引き起こす「負の部分」も指摘している。

「多数の人々が掲示板に煽られて、誤った投資判断が連鎖することで、株価が本来の価格から離れていく危険性もある」
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