自身のブログで「辞めてもらいたい議員」のアンケートをするなどして波紋を呼んだ鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)をめぐる状況に異変が起きている。市議会での不信任案の可決を受けて、市長は議会を解散。それを受けて行われた「出直し市議選」の結果、定数16人のうち11人を「反市長派」が占め、不信任案が再可決される可能性が濃厚だ。ところが、市民と議員による「対話集会」では、市長を支持する声が続出。アンケートでは6割以上が「不信任に反対」との結果が出るなど、市長側には「追い風」が吹いている様子なのだ。
「市長不信任に反対」との回答が61.7%
阿久根市の出直し市議選は定数16に対し、反市長派16人、市長派7人とで争われ、2009年3月22日に投開票された。反市長派は前職10人のうち4人が落選したものの、11議席を確保。地方自治法の規定では、再可決の条件は「議員数の3分の2以上が出席した上で、そのうち過半数が賛成すること」となっており、再可決は濃厚な情勢だ。不信任案が可決されれば、市長は失職する。このことから、地元メディアでは、市長が劣勢に立たされているとの観測が広がっていた。
だが、竹原市長の受け止め方は対照的で、
「解散は、市議会の議員を入れ替えることを目的にしたものだったので、上手くいったのでは。仮に反市長派であっても、新人が当選したのは良いこと」
と、「市議選は成功」との見方だ。確かに、当選した16人のうち、得票数で上位を独占したのは市長派の前職1人と、新人4人。市長派が、市民から相当な支持を集めていることは間違いないようだ。
実際、3月29日には、全16人の議員と市民との対話集会が開かれたのだが、700人の市民で埋まった会場からは「市長支持論」が続出。逆に、「議会は市長をいじめているのか」などと「議会批判」も相次いだという。トップ当選を果たした市長派の山田勝議員(63)は、会場アンケートの結果をブログで公表。回収した619枚のうち、「市長不信任に賛成」と答えたのは203枚(32.8%)だったのに対して、「市長不信任に反対」との回答は382枚(61.7%)に及んだ。
市長は再出馬に意欲?
なお、竹原市長は、対話集会の主催者から、事前に
「仮に出席したとしても、発言は認めない」
などと伝えられていたといい、
「行きたくもなかったし、体調が悪かった」
として欠席。今後想定される出直し選については
「不信任案が可決されてみないと分かりませんが、頑張ります。出ないと(出馬しないと)しょうがないでしょう」
と、一応の再出馬の意欲を見せている。
なお、ブログの内容が議論になることが多い竹原市長だが、09年3月31日の書き込みでは、04年の九州新幹線部分開業を機にJR九州から経営を移管されて誕生した第3セクターの「肥薩おれんじ鉄道」(熊本県八代市)の経営状態に矛先を向けている。
「JR九州が10年間に限り人件費の半分を出すことになっている。あと5年程だ。5年後にはJRが手を引き、破綻が決定的になる。早く手を打てば苦しみも少なくて済む」
と、赤字続きの同鉄道が経営破綻した場合、自治体の負担が増大することを懸念している様子だ。なお、九州新幹線の駅は阿久根市には設けられず、新幹線開業が阿久根市の衰退に拍車をかけたとされる。
竹原市長は、
「経営センスのあるJRが、経営センスのない政治家に赤字路線を押しつけたようなもの。JRにすれば、赤子の手をひねるようなものでしょう」
と憤る。同鉄道は、阿久根市内に駅がある唯一の鉄道路線なのだが、
「鉄道がなければ車で移動すればいいでしょう。個人的には、代替バスに補助金でも出した方が安上がりになると思いますけどね」
と、路線の存在意義に疑問を呈していた。