空前のテレビ不況で、民放各局が、徹底したケチケチ作戦を展開している。人件費の大幅なカットばかりでなく、コピー代、弁当代まで節約しているというのだ。そんなにして、いい番組ができればよいが…。
弁当も1000円を800~700円に
「お天気お姉さん」のコーナーはあるが…
「ある民放キー局で、コピー用紙を裏と表両方使うというんですよ。調子いい時代には、編成部員が1人1日5~10万円飲んで、年間3000万円も経費を使っていたあのキー局がですよ」
テレビ界の事情に詳しい芸能評論家の肥留間正明さんは、こう驚く。
広告収入の大幅減で、民放各局に、コスト削減の嵐が吹き荒れている。前出のキー局では、コピー用紙の扱い方に慣れないため、間違えてコピーするケースが続出。表だけ使った場合より余計にコピーするという、笑えない笑い話があったそうだ。
「さらに節約のため、何枚取ったか記録しなさい、というんですね。弁当なんかでも、1000円したのを800円、いや700円にしろ、というのも当然のように言われています。タクシーはなるべく控えろ、どころでなく、すべて電車に乗れ、領収書も取れ、とここまで徹底しているようですよ」(肥留間さん)
コピー用紙にまでこだわるくらいだから、人件費についてはもっとシビアだ。
TBSはボーナス2~3割カットを打ち出して労組が全面スト状態に入り、民放労連によると、まだ妥結せずに交渉が続いている。ほかのキー局については、「ボーナスについては、TBSと同じぐらい」(芸能プロ関係者)といい、民放労連では、まだどこも妥結していないとしている。
肥留間さんによると、ある民放キー局で、局員を定年退職後に嘱託などとして再雇用する場合も、大幅な減給を提示しているという。「年収が1500~600万円だったのが、500万円以下にするというんですね。民放各局とも、再雇用で出せるのは、400万円が限度とも聞いています」
フリーアナを契約解除して、局アナを使う
もちろん、人件費の削減は、局員ばかりに向いているわけではない。
金のかかる大物タレントは、もちろん切られつつある。みのもんたさんが、2009年4月の番組改編で、日本テレビ系「おもいッきりイイ!! テレビ」など2番組を降板したなどの例だ。しかし、民放関係者によると、目立たないところで、「派遣切り」のような人員削減が行われているというのだ。
それは、例えば、芸能プロ派遣などのフリーアナウンサーを契約解除して、局アナを使うという流れだ。テレビ朝日系「やじうまプラス」では、お天気お姉さんとして活躍していた同じ事務所所属のフリーアナ3人が全員、この改編期で契約解除になった。テレビ朝日の番組担当者は、「番組のリニューアルのためです。代わりに局内の人を使うことになっています」と説明する。
民放関係者によると、テレ朝に限らず、フリーアナは切られる方向で、この関係者は「その代わりに、正社員の局員の負担が増えています」と明かす。
こうしたコスト削減策が、番組の内容にも影響している。
ロケ費用などがかかるドラマより、局アナで済む情報番組に替えたり、深夜の通販番組を増やしたり。関係者からは、番組制作費を削ったことで、その媒体価値が下がり、ますますテレビ離れが進むとの懸念の声が上がっている。
芸能評論家の肥留間正明さんは、次のように、テレビ界の課題を指摘する。
「TBSが始めた2時間枠の報道番組も、女子アナだけでは地味で、みのもんたとかがいないと、視聴率の数字が取れないでしょうね。もし、局員だけでやろうとするなら、人を育てる方向でないといけません。かつてのように自局で番組を作るということです。あるいは、配給だけする映画会社のように、放送するだけに特化するか、2つに1つの選択でしょうね」