東京株式市場の日経平均株価が急回復している。2009年3月10日にはバブル経済崩壊後の最安値に迫ろうかという勢いで7000円割れ寸前まで下落したが、その後急伸した。外国人投資家が戻ってきたことが好調の要因にあげられ、市場関係者の間では「潮目が変わり、底を打った」との見方も広がってきた。株価はこのまま上昇気流に乗るのだろうか。
約半月で1500円超の急上昇
2009年3月27日の日経平均株価の終値は、8626円97銭。一時は8843円18銭まで上昇したが前日比9円36銭の小反落で引けた。景気の底入れ期待から、3月26日の米ニューヨーク株式市場が大幅続伸したことで、東京株式市場でも前場は幅広い銘柄で「買い」が入ったが、その後は銀行株などの利益確定売りが目立った。
とはいえ、ここ半月の株価の上昇はもの凄い。3月10日に7054円だった株価が、1500円を超えて急騰したのだ。
第一生命経済研究所の島峰義清・主席エコノミストはその主な原因を、「政府の株価対策が功を奏している」とみている。銀行等保有株式買い取りや上場投資信託(ETF)の買い取り案などの株価維持対策、財政再建論者とされた与謝野馨財務相の「方針転換」などによって、「3月中に株価を押し上げるという意図が、かなり明確に市場に伝わってきた」と話している。
これに加えて、米株価が戻り基調に転じたこと。国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「米政府が不良債権の最大1兆ドルの買い取りなどの金融危機対応の具体策を発表したことが大きい」と見る。オバマ大統領が自動車産業への追加支援に前向きなこともある。こうした米国の底入れ機運や、さらには中国などのアジア経済の回復期待の高まりが投資家の冷え込んでいた投資マインドを温めた。
株価「7000円割れ」の恐怖は遠ざかったが…
東京証券取引所が3月26日に発表した東京・大阪・名古屋の主要3市場(1部、2部)の3月16日~19日の投資部門別売買状況によると、外国人投資家が10週ぶりに、4432万株、6011万円の「買い越し」となった。
外国人投資家が「売れば」株価も下がるし、「買い」に入れば上昇する。国内市場が外国人投資家しだいなのは相変わらずだが、前出の枝川氏は「米政府の施策への期待感を背景に、外国人投資家は強気だ」という。それが「約半月に1500円超」もの株価上昇につながったわけだ。
しかし、株価が引き続き上昇していくとの見方は少ない。
枝川氏は、「米経済の回復と日本経済の回復は別の問題。いまの日本経済の最大の問題は輸出が急減。米政府の打ち出した不良債権処理策の効果が米国の実体経済に波及するには時間がかかるだろうし、個人消費は期待できない。日本企業のパフォーマンスにすぐさま大きなプラスになるとは思えない」と分析する。
島峰氏は、「4~5月の見通しは明るくない。1~3月の業績発表と2010年3月期の業績見通しが発表されるがかなり悪そう。米GMの再建策、金融機関の業績悪化と不安要因は目白押し」と、株価は一旦下げ押す場面があると指摘する。
島峰氏、枝川氏はともに、この先も株価がどんどん上がっていくこともないが、「7000円割れのリスクは遠ざかった」とみている。