東京都内の高級ホテル市場が不況の直撃を受け、崩壊寸前だ。利用者をなんとか確保しようと、宿泊料金は値引き合戦が熾烈で、1泊(ツイン、食事なし)1万円を下回る料金設定も登場。どこも50~70%引きは当たり前のようになっていて、いまや「タタキ売り」状態だ。
10万1089円のところが4万9665円
価格比較サイトのカカクコムが運営するyoyaQ.comの「注目の割引ホテル」。ここに掲載された宿泊料金は、「これが高級ホテルの値段なのか」と驚かされる。
東京・竹芝のホテル インターコンチネンタル東京ベイのツイン(食事なし、2人1室)は、正規料金が4万9665円だが、これが1万2000円。白金にあるシェラトン都ホテル東京は、ツイン(食事なし)の4万1370円の部屋がなんと9800円と1万円を割っている。
まだある。高級ホテルに「安く泊まれる」と評判のサイト、一休.comでは、セルリアンタワー東急ホテル(渋谷)の、通常2人1室6万460円の部屋が1万9800円~2万300円で提供されている。
3月30日に開業2周年を迎える六本木のザ・リッツ・カールトン東京は、宿泊パッケージ「セカンドイヤー アニバーサリー」を4月30日まで展開。「デラックスダブル」(2人利用)が通常2人で10万1089円のところ、4万9665円になっている。
コンラッド東京(汐留)のホームページのトップには、「ヒルトン彩発見 12月31日まで 最大45%OFF!」の文字が躍る。
日本の老舗高級ホテルも値下げ合戦に参戦している。阪急交通社によると、帝国ホテル東京の日月限定プラン(ツイン)が一人あたり1万7000円。一休.comの1泊限定「シティナイトステイ UP GRADE」(食事なし)だと、通常料金が2人で5万5440円のところ、2万6500円で泊まれる。
ニューオータニでは、通常2人で4万1980円の部屋が、「カップルにオススメ! ガーデンタワーSTD」を利用すれば1万8000円になる。
割引率でみると、どこも50~70%が当たりまえのようになっていて、割引は半ば恒常化してしまったようだ。
稼働率「悪いときだと60%割る」
ホテルの利用者が激減している理由は、世界的な金融危機と円高だ。もともと、外資系高級ホテルの利用者の多くは、外国人ビジネスマンや観光客。「外国人旅行者やビジネスの利用者が急激に減ったことが稼働率を落としている原因」(フォーシーズンズホテル丸の内東京)という。
それに加えて、ここ数年来続いた開業ラッシュで、お客の奪い合いが鮮明になったこともある。2009年3月2日にオープンしたばかりのシャングリ・ラ・ホテル東京は、東京駅八重洲口にあるが、東京駅や日本橋、日比谷界隈にある外資系高級ホテルは4つ。これに帝国ホテル東京や、少し足を伸ばせば、ザ・リッツ・カールトン東京やコンラッド東京、ホテル・オークラといった高級ホテルがあるのだから、乱立ぎみではあった。
ある外資系高級ホテルの関係者は、「1年前はまだ8割くらいの稼働率は維持できていた」という。それが現在は、「悪いときだと60%を割る」そうだ。
それでも、空室を放っておいても売上げは上がらない。集客力を高めて稼働率を上げるため、オリジナルのパッケージ商品を投入。外国人利用者の減少を国内利用者で補ったり、レストランでの豪華ディナーやスパの無料利用などの付加価値を加えることで宿泊料金の割引率を抑えたりと腐心している。
なかにはチェックインの時間が午後9時を過ぎると割引率が上がるなど、仕事帰りのビジネスパーソンを狙ったプランもあって、とても高級ホテルとは思えぬ企画に、その苦悩ぶりもうかがえる。