静岡県の石川嘉延知事が、空港開港を巡る地権者の要求を飲んで辞職する異例の事態になった。多選批判も考慮したとみられているが、なぜそんな要求に応じてしまったのか。公共事業を進めるうえで、悪い先例にならないのだろうか。
私有地の地権者の要求に知事が屈した形
静岡空港の公式ホームページ
「辞めれば、立ち木を切ってもらえると期待します」
静岡県の石川嘉延知事は、2009年3月25日の県庁記者会見で、7月末までの任期半ばで辞職する理由をこう述べた。
6月4日に開港予定の静岡空港については、土地収用での測量ミスなどから西側私有地に航空法の高さ制限を超える立ち木153本が残された。そして、開港が3か月延期されたうえ、2500メートルの滑走路が暫定的に2200メートルに短縮して運用されることになった。そして、私有地の地権者は、なんと木を切る条件として、知事の辞職を求めていたというのだ。
完全開港に向けた決断とはいえ、なぜ石川知事はそんな要求を飲むような異例の対応をしたのだろうか。ほかに、事態を打開する方法はなかったのか。
地権者から辞職を求められたのは、石川知事が2月、交渉のために会ったときだった。立ち木伐採について、知事が地滑り防止工事のためと説明し、1年間も航空法上の問題を明らかにしなかったとして、地権者が怒ったらしい。これに対し、石川知事は、辞職を拒み、同意が得られない場合、民事訴訟を起こして強制除去を目指す考えを示していた。
そんな中で突然、辞職表明したことについて、石川知事は会見で、政治的な判断があったことを明らかにした。たとえ訴訟を起こしたとしても、判決が確定するまでに数年はかかるとして、早期の完全開港には自らが折れるしかないと考えたというのだ。
石川知事を巡っては、西松建設のパーティー券購入問題、次回で5選目となる多選批判が持ち上がっている。ある自民党県議は、「西松建設の問題は、関係ないでしょうが、多選批判を意識したことはあると思います。空港と多選をともに考えて辞職の決断をしたとみています」と話す。