マスコミの注目度は低かったが、政府の郵政民営化推進本部の会合が2009年3月19日に開かれ、郵政民営化委員会(田中直毅委員長)の見直しに関する意見書が本部長である麻生太郎首相に提出された。意見書は現行の四分社化を維持しながら、日本郵政の株式の公開・上場による市場規律の貫徹が必要だと提言した。3年ごとに行われる郵政民営化の見直しは、小泉・竹中構造改革路線の維持に主眼が置かれ、焦点となった四分社の見直しなどは見送られることになった。
3年後の見直しは、大胆なものになる?
推進本部の本部長である麻生太郎首相は「これまで利用者の利便性の向上、経営の健全化という観点から、改善すべき点は改善する必要があると申し上げてきたが、今回の意見書は問題の所在、問題解決の方向性を示している」と、官僚答弁のように評価した。しかし、推進本部の司会を務めた鳩山邦夫総務相は19日の閣議後会見で「地方を中心に利便性が向上したという声は極めて少ない。やっぱり利便性はやや失われたのではないか。不便になったんではないかという意見が圧倒的に多い」と指摘。郵政民営化の抜本見直しの必要性を改めて強調したが、「(郵政民営化は)まだ試行錯誤の段階であって、分社化の形をうんぬんすべき時ではない」とも述べ、当面の現状維持を認めざるを得なかった。
鳩山総務相は郵政民営化委員会の意見書について、これまで「まだ郵政民営化から1年半ということなので、それほど大胆な指摘にはならない」と漏らしていた。鳩山総務相は「郵政民営化の影の部分について、みんなで研究・調査し、国民の意見もいただく中で、今後見直しはするであろう」「3年後の見直しは、予想はつかないが、大胆なものになるかもしれない」と、早くも3年後の見直し論議に期待を示している。かんぽの宿のオリックスへの一括譲渡問題や東京中央郵便局の再開発問題で政治的リーダーシップを発揮し、「行き過ぎた郵政民営化」にブレーキをかけることに成功した鳩山総務相にしては、トーンダウンした控え目な発言とも受け取れた。
「鳩山氏のスタンドプレーは目に余る」との批判の声
これには事情があるようだ。今回の郵政民営化見直し論議は、四分社化の見直しが「改革後退」と世論に評価されることを恐れ、現状維持にとどまった。自民党内で中川秀直元幹事長ら小泉・竹中路線支持派の反発を抑えることで、党内の分裂を避ける狙いもあった。
さらには自民党内では、かんぽの宿と東京中央郵便局の再開発問題などで続く鳩山総務相の言動や行動について、「鳩山氏のスタンドプレーは目に余る」との批判の声も出始めていた。麻生首相も側近に対して「鳩山氏はやりすぎだ」と漏らしているという。鳩山総務相がこれ以上、郵政民営化にブレーキをかけすぎると、世論の反発を買うことも予想される。小泉・竹中改革路線に異議を唱える鳩山総務相は、4月で任期満了を迎える郵政民営化委員会の委員を入れ替えることを狙っており、次期民営化委員会で小泉・竹中路線を根本から見直すのが当面の戦略のようだ。