東京マラソンで一時心肺停止状態になったお笑いタレントの松村邦洋さん(41)。デブキャラで知られ、かねてより参加を危惧する声が出ていた。やはりチャレンジは無謀だったのだろうか。
事務所は「体調もよく、順調に走っていた」
東京マラソンの公式サイト
そのまま放置されていれば、死亡していたようだ。
松村邦洋さんが2009年3月22日の東京マラソン参加中に突然倒れたのは、15キロ地点手前。スポーツ紙各紙によると、松村さんは急に足を止め、後ろにひっくり返るように路上に倒れ込んだ。ぐったりした様子で、口から泡を吹き、目はうつろ。呼びかけても、反応がなかったという。所属事務所の太田プロダクションによると、ストレッチをしようとしたときに突然意識消失した。
近くにいた医師らが駆けつけ、心肺停止状態を確認。電気ショックを与えるAED(自動体外式除細動器)で緊急処置をして、やっと呼吸を回復した。東京消防庁によると、心臓停止では3分間、呼吸停止では10分間放置されると、死亡率が5割を超すといい、松村さんは、処置が早かったために助かった。
松村さんは、そのまま緊急入院。太田プロは23日、病名を「急性心筋梗塞による心室細動」と発表した。「持病ではなく、急性によるもの」としている。
デブキャラとしては、体重200キロ以上あるとされる元横綱の曙さん(39)が、ドクターストップで今回の東京マラソンを断念していた。松村さんは、公式プロフィールによると、身長164センチ、体重128キロ。曙さんほどの巨漢ではないとしても、マラソン挑戦は無謀ではなかったのか。
太田プロの担当マネージャーによると、プロフィールとは違って、松村さんは、マラソントレーニングをしているここ2年は体重100キロ台をキープ。東京マラソンの22日は、102キロ弱だったという。
松村さんは、4度目のマラソン挑戦。08年7月には、オーストラリアのゴールドコースト・マラソンで初めて制限時間内の6時間51分40秒で完走している。五輪メダリストの有森裕子さんらも育てた指導者の下で練習しており、東京MXテレビの情報番組出演で走った今回の東京マラソンについて、太田プロでは、「体調もよく、順調に走っていた途中のアクシデント」としている。
専門家「僕なら止めていたでしょうね」
しかし、デブキャラの松村邦洋さんには、大会主催者からも懸念の声が出ていた。大会会長の石原慎太郎東京都知事は、前回大会前の2008年2月15日、定例会見で、当時もMXテレビ番組で出場した松村さんについて「大丈夫か?」と首をひねり、「10キロやせたといっても、転がった方が早いのでは。無理しないでもらいたい」と述べていた。
「賢く走るフルマラソン」の著者がある福岡大の田中宏暁教授は、心肺停止の原因は調べてみないと分からないとしながらも、松村さんの走り方がある限度を超えた可能性を指摘する。
その限度のことを、田中教授は「ニコニコペース」と呼ぶ。このペースを超えると、心臓の酸素需要量が多くなり、心音が急激に高くなる。その結果、心臓へ十分な酸素を送り込めなくなり、負担が上がって、危険度が増すという。
「太っている人やメタボ体質の人は、体重が重いので心臓への負担が大きくなります。ほかの人と同じスピードで走るのはきついので、要注意なんですね」
102キロの体で挑戦した松村さんについて、田中教授は、「走れる体ではないように感じます。僕なら止めていたでしょうね」と指摘する。
今回の東京マラソンでは、テレビ出演などのため芸能人や有名人も大挙して参加した。これに対し、田中教授は、たとえデブキャラでなくても安易な参加は危険だと警告する。
「ほとんどの人は、ニコニコペースより速く走ってしまうからです。マラソンで3時間を切るランナーは、普段鍛えていて脈も遅いので、そのペースに近く走れます。ところが、普通の人は、感覚的にそれが分からないから怖いんですよ。ペースには要注意で、よほど分かって走らないといけませんね」
ちなみに、東京マラソン事務局によると、今回は、心肺停止になったのが松村さんも含め2人いた。前々回の07年も2人いたという。