不況下にもかかわらず、大手牛丼チェーンは出店ラッシュになりそうだ。節約志向で売り上げが好調だからだ。とりわけ吉野家とすき家は2009年度に店舗数を一気に増やすという強気の戦略に乗り出した。シェア(市場占有率)確保を狙い、牛丼戦争は激しくなるばかりだ。
テナント料が低く抑えられるのも影響
牛丼チェーン吉野家を展開する吉野家ホールディングスは2009年度、08年度の2割増にあたる、およそ100店舗の出店を予定している。吉野家は2月末現在、全国に1102の店舗がある。吉野家ホールディングス広報部は、
「都市部や郊外に限らずに出店余地はある。投資効率が見込める地域で積極的に出店する。また、このような経済状況の中で資産価値も落ち、テナント料が低く抑えられるという見込みもある。私たちにとってはチャンスだと思っている」
と意気込む。
一方、松屋フーズも2008年度の35店舗以上の出店を目指したい考えだ。2月末現在745店舗がある。広報IRグループでは、「24時間営業のため、大都市圏を中心としたいい立地条件があれば、積極的に出店したいと考えている」と話している。
松屋は「牛めし・豚めし」「カレー」「定食」が3本柱。定食ではメニューを随時入れ替えるなど工夫を凝らしている。3月には新メニューとして、「味噌てりチキン定食」(580円)、「豚テキ定食」(680円)が加わった。
さらに、ゼンショーが経営する、すき家は昨年度と同数の200店舗の出店を計画している。すき家の店舗数は09年2月現在1191店で、立地は郊外が中心だ。すき家は08年9月に、吉野家の店舗数を抜き、牛丼チェーン店は国内最多となったことが話題になった。広報室は「お客さまの要望に応えて、全国で出店したい」と話す。すき家は丼ぶりメニューの豊富さが特徴で、豚とろ角煮丼(450円)や五目あんかけ丼(430円)、まぐろたたき丼(480円)などがある。
シェア拡大のための出店ラッシュ?
牛丼チェーン店の場合、吉野家全店では、08年10月~09年3月の下半期売上高は、前年比6.0%増、客数も5.6%増と好調だった。松屋の下期全店売上高は前年比1.8%増、既存店の客数は4.3%減。すき家の下期全店売上高は15.0%増、既存店の客数は増減なしだった。
日本フードサービス協会が09年2月25日に発表した「1月の外食産業市場動向」によると、ファミリーレストランの売上高は前年比5.5%減、客数5.3%減と、ファーストフードとは対照的だった。同協会の担当者は、やや割高な価格設定のファミレスが苦戦したのには、昨今の節約志向が反映しているものと見ている。
また、牛丼チェーン店の出店ラッシュについては、
「外食産業のうちファーストフード店はもともと、スクラップアンドビルドが多い業界だ。そうした中で、出店を増やし、シェア拡大を目指しているのではないか」
と話している。