「週刊少年マガジン」と「週刊少年サンデー」が創刊50周年を迎え、2009年3月17日に盛大な記念式典を行ったが、「週刊少年ジャンプ」などを含めたこれら少年誌は、少子化やケータイなどに人気を奪われ、発行部数が10年前の半分以下になるなど低迷ぶりが目立つ。赤字が増え、「廃刊の危機」といった噂も出るなかで、今後はどうなってしまうのか。
漫画から発生したビジネスは1兆5千億円超
「週刊少年サンデー」と「週刊少年マガジン」の創刊50周年式典が行われた。
全国出版協会「出版指標年報」の07年版、08年版によると、国内の少年漫画誌の発行部数は97年の15億1583万冊に対し、07年は10億23万冊。売上げは97年の4070億円から07年は3184億円に落ち込んだ。雑誌別では、「週刊少年ジャンプ」はピーク時に653万部だったのが、現在は 280万部前後。450万部あった「週刊少年マガジン」が165万部、「週刊少年サンデー」は228万部だったのが90万部程度なのだそうだ。
この落ち込み方はまさに「危機的状況」と言える。ただ、漫画雑誌の売上げが赤字に陥ったとしても、それが直ちに「廃刊」にはつながらない構造が存在しているのだ。
漫画雑誌を核とした収益がかなり期待できるからだ。「クロスメディア展開」といわれるもので、漫画が原作となるアニメ、映画、ゲーム、フィギュアが続々と作られている事を指す。先の「指標年報」によれば、07年には、漫画が原作のアニメ、ドラマ、映画が、100以上も登場している。つまり、ライセンスビジネスが活発化しているわけで、
「映像化とともに、キャラクタービジネス、版権ビジネスをいかに展開し、収益を上げる」
というのが少年漫画誌の進む道だと書かれている。
それを示すように、「サンデー」では現在、連載中の漫画「名探偵コナン」「ハヤテのごとく!」「MAJOR」「絶対可憐チルドレン」など、多数の作品がアニメ化、ゲーム化、ドラマCD化、フィギュア化されている。
コンテンツ市場に詳しい調査会社ヒューマンメディアによれば、漫画は現在、「クロスメディア」展開の代表的存在になっていて、日本のアニメの約60%は漫画が原作だ。ゲームや、音楽CD,ドラマCD、その他漫画から派生したと考えられる市場は、1兆5千億円以上になる計算だという。
連載をまとめた単行本は、漫画誌ほどは減っていない
海外でも日本のマンガ・アニメ・ゲーム関連コンテンツは、「クール・ジャパン」としてファンを増やし、同じような市場を形成していて、
「今年はハリウッドで『ドラゴンボール』が映画化されました。これからも日本の漫画が海外で実写映画化されることになりますから、漫画の著作権ビジネスはますます拡大していくことになると考えています」
としている。
一方で少年漫画誌は低迷しているが、連載をまとめた「コミック」(単行本)は、漫画誌ほどは落ちていない。07年まで6年連続して前年を下回ったが、それでも7億1295冊を売り上げている。つまり、連載は読まないが、まとめてコミックを読む傾向が出ている。だから、いくら漫画誌が低迷していても、廃刊してしまうと、
「コミックも、アニメ・ゲームも生まれず、全てを維持することができなくなる」(出版指標年報)
というのが業界の考え方でもある。
漫画やアニメに詳しいジャーナリストは、これからの少年漫画誌の方向性について、
「少年漫画誌に連載されている漫画は、アニメ化や、ゲーム化の予備軍としてその存在意義を見いだすようになっている。さらに、連載をまとめたコミックの売上げはさほど落ちていないため、それらもろもろの『カタログ』、コンテンツの源泉としての役割を担っていくのではないか」
と話している。