部屋や車を締め切った上で、特定の物質を混ぜ合わせて硫化水素を発生させる「硫化水素自殺」が相次いだのは記憶に新しい。発生させた硫化水素が、自殺志願者本人のみならず近隣住民や救急隊員にも被害を与えることから、社会的にも問題視された。そんな硫化水素自殺が、米国でも起こっているというのだ。
男性の部屋には、2枚の皿があり、青色の液体が入っていた
2008年には、日本国内で硫化水素による自殺が相次いだ。ネット上での情報をもとに自殺を試みたとみられるケースが多いことから、警察庁は08年5月に、ネット上にある「硫化水素の発生方法」などを、公序良俗に反する「有害情報」に指定。各都道府県警や業界団体を通じて、削除依頼を行っている。それでも、硫化水素による自殺者の数は、08年の1月~11月にかけて1007人が確認されている。
そんな中、米国でも同様の自殺の事例が、いくつか確認されているのだ。例えば09年2月には、カリフォルニア州・サンノゼで、18歳の男性が自宅で意識不明の状態で発見された。男性は病院に運ばれたが、その日のうちに死亡した。救急隊が駆けつけた段階では、「有毒ガスが原因らしい」ということまでは分かっていたものの、男性が吸い込んだ毒物の種類までは不明。そのため、搬送先の病院では、除染作業のために救急救命室を数時間にわたって閉鎖を余儀なくされた。
男性の部屋には、2枚の皿があり、青色の液体が入っていたという。液体は硫化水素であると断定された。
ただ、現地の報道によると、警察当局は男性が自殺を図ったものとして捜査を進めているものの、男性が硫化水素を入手した動機や経路については、ほとんど解明されていないという。
「事件についての大部分は、ミステリーのまま」
また、08年12月には、ジョージア州で、男性が車の中で息をしていないように見える状態で発見され、危険物処理班などが出動。車内には、黄色い物質が入ったバケツ2つが残され、窓には「注意」と書かれたメモが残されていた。男性が車内で物質を混ぜて有毒ガスを発生させ、自殺を図ったものと見られている。現地の報道によると、車内で発見された物質は「硫酸を含む化学物質の混合物」だという。前出のケースと同様、自殺の動機・薬剤の入手経路などは明らかになっていないが、いわゆる「硫化水素自殺」である可能性も高そうだ。
国内の事例では、硫化水素を発生されるための薬剤として、一般的に手に入る製品の名前が指摘され、その製品が製造中止に追い込まれてもいる。まだ米国では、ネット上には同様の情報は拡散していない模様だ。そのため、前出のカリフォルニア州の事例でも、捜査当局では、
「事件についての大部分は、ミステリーのまま」
との見方をしている。