ストリンガー会長に権限集中 ソニーの「トップダウン型」新体制

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   業績悪化に苦しむソニーは2009年4月1日付で、ハワード・ストリンガー会長兼CEO(最高経営責任者)が社長を兼務する新体制に移行する。現在社長を務める中鉢良治社長は代表権を持つ副会長に退く。ソニーの柱でありながら、不振から抜け出せないエレクトロニクス事業をストリンガー氏が直轄し、経営の立て直しを急ぐ狙いという。

次期社長有力候補の副社長も外す

   ストリンガー氏は05年6月に会長に就任し、中鉢氏が同月、社長に就いた。音楽や映画などのソフト部門で実績を上げてきたストリンガー氏と、 技術畑出身の中鉢氏が「二頭体制」でソニーの経営に取り組む体制となった。この結果、当時から最大の課題だったエレクトロニクス事業の建て直しについては、08年3月期に売り上げ全体の7割を超えるまでに成長し、3560億円もの営業利益を稼ぎ出すまでに回復したはずだった。

   しかし、08年秋以降の世界的な消費低迷に直撃される中、液晶テレビやデジタルカメラの販売は急速に落ち込み、ソニー全体の09年3月期の連結営業損益は2600億円と過去最悪の赤字に陥る見通しだ。このため、ソニーは国内外で1万6000人超の人員削減も余儀なくされることとなった。

   ソニーの新体制は、05年6月から続いてきたストリンガー氏と中鉢氏の二頭体制をやめ、ストリンガー氏だけに権限を集中させる「トップダウン型」の体制を固めたといえる。ストリンガー氏は次期社長の有力候補とみられていたデジタル家電担当の井原勝美副社長も外し、若手を起用。記者会見でストリンガー氏は新体制の狙いについて、「危機だからこそ、(会長と社長を兼務して)中間層を少なくし、担当者と直接やりとりする必要がある」などと語った。

「ストリンガー氏もいっしょに責任を負うべきだ」との声も

   しかし、今回の人事は中鉢氏だけがソニーの事業悪化の責任をとらされた感は否めない。実際、08年12月の大規模リストラ発表直後から、ストリンガー氏と中鉢氏の両者が退き、人心一新で経営の立て直しを図る可能性を指摘する声も出ていた。業界関係者からは「これまで二頭体制で来たのだから、ストリンガー氏もいっしょに責任を負うべきだ。中鉢氏だけが責任をとるのは不可思議」との声も少なくない。

   また、技術畑出身の中鉢氏が退き、英国出身で米大手テレビCBS放送部門プレジデントなどを務めたストリンガー氏が全権限をもつことで、「ソニーの伝統である物作りの精神が薄くなってしまうのではないか」(業界関係者)と懸念する声も出ている。

ストリンガー氏を頂点としたソニーの新体制がいかにソニーの改革を進め、早期に経営を改善できるのか。注目が集まっている。
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