三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と、傘下の三菱UFJ証券との関係がギクシャクしている。三菱UFJFGは、米証券大手モルガン・スタンレーに出資、さらに三菱UFJ証券とモルガン日本法人との経営統合に向けた検討も進めている。シティグループ傘下の日興コーディアル証券の買収にも名乗りを上げ、常に業界再編の主役だ。だが、三菱UFJ証券からは「規模が大きくなればいいのか」との批判も漏れている。巨大金融グループ内部の不協和音は強まるのか。
日本型経営の良さを改めて見直す時期?
「モルガン・スタンレー日本法人と経営統合しても効果は出せるのか」
三菱UFJ証券幹部は、証券の経営統合を急ぐ三菱UFJFGへの不満を隠さない。「金融危機で米国の投資銀行業務の危うさが露呈した。企業を支援する日本型経営の良さを改めて見直す時期なのに。証券業を知らない銀行マンは規模の追及にしか関心がない」というわけだ。
ただ、三菱UFJFG経営陣にとって、証券事業拡大は盤石な経営基盤を築くのには欠かせない戦略だ。チャンスになったのは、2008年10月のモルガン・スタンレーへの90億ドル(約9000億円)の出資。21%の筆頭株主になり、投資銀行や資産運用での提携効果をもくろむが、証券会社の経営統合も提携の柱の一つに据えた。
具体的には、三菱UFJ証券を法人部門と個人部門に分割し、法人部門をモルガン日本法人であるモルガン・スタンレー証券と統合する計画を軸に検討している。海外でのM&A(企業の合併・統合)や大企業の新株引き受けなどモルガンのノウハウを取得し、攻勢を仕掛ける戦略だ。また、日興コーディアル証券の買収にも成功すれば、名実ともに証券業界での地位は向上する。
顧客の預かり資産で見ると三菱UFJ証券は約21兆円。日興コーディアル証券(約24兆円)を買収した場合は、単純合算した預かり資産は45兆円に膨らみ、業界2位の大和証券グループ本社(44兆円)を抜く。