JR東京駅前の東京中央郵便局の再開発をめぐる問題が、あわただしくなってきた。国の重要文化財としての価値があることから、鳩山邦夫総務相が再開発に「待った」をかけたが、東京都は2009年3月6日、再開発を認める都市計画を決定。鳩山総務相とは「宿敵」の石原慎太郎都知事が同日、「総務大臣の個人的心情うんぬんはあるだろうが、この段階では大きい計画そのものが毀損されかねない」と述べ、日本郵政の再開発を支持する考えを示した。同郵便局の再開発問題は、政府や東京都までを巻き込み、波乱含みの様相を示してきた。
「かなり無理な問題」と露骨に鳩山総務相を批判
鳩山総務相が「重要文化財になるものをなくすのは、トキを焼き鳥にして食べるような話だ」と、日本郵政の対応を批判したのは09年2月26日。その後、日本郵政グループの西川善文社長は3月3日の会見で、再開発について「私どもは別に(国の重要文化財や)登録有形文化財の指定を望んでいるわけではない」と述べ、鳩山総務相が主張する文化財指定を受けず、飽くまで再開発を進める考えを明らかにしていた。6日の石原都知事の発言は、西川社長の経営戦略を支持するものだ。
石原都知事は「東京駅を中心に新しいエリアの複合的なよい都市計画がある。その中でポツッとあの建物ひとつを残すということは、かなり無理な問題だと思う。今になって文化財の価値を云々されても……」とも述べ、露骨に鳩山総務相の姿勢を批判した。
しかし、これらの動きに鳩山総務相も黙っていない。本人が「待った」をかけた後も、日本郵政が工事を継続していることに業を煮やした鳩山総務相は6日、「私が4日に高木祥吉副社長に電話し、(工事の中断を)申し入れた」と明らかにした。これに対して、高木副社長は5日、「保全という観点以外の工事はしない」と鳩山総務相に連絡してきたという。
この結果、日本郵政は当初予定していた本格的な解体工事を一時中断すると認めざるを得なくなった。実は日本郵政は鳩山発言があった2月26日以降、本格的な解体工事は中断し、保存箇所の補強工事などに限って作業を進めていたが、改めて「工事の中断」を対外的に表明せざるを得なかったというのが真相のようだ。