アルバイトやパート、派遣社員の平均時給が、求人情報を提供するサービス各社が調査を開始して以来の最低水準まで落ち込んできた。アルバイトの時給は950円前後、派遣社員は1600円を割った。アルバイトの「定番」のひとつ、飲食店や販売・サービス業の時給が引き下げられていることに加えて、工場などに勤める技術系や事務職も下げ幅が広がっている。不況にあえぐ企業は大も小もこぞって、人件費の削減に血眼になっている。
外食系、技術系や事務系の落ち込み目立つ
求人情報を提供しているリクルートやインテリジェンス、エン・ジャパンはそれぞれ、2009年1月の平均賃金を取りまとめた。各社は、掲載した求人情報の集計を基にしているのでデータは若干異なるが、結果は以下のとおり。
リクルートによると、アルバイトやパートの平均時給(3大都市圏)は949円。前年同月比では0.3%上昇したが、前月比では0.8%減少した。人手不足が深刻な外食などの飲食店や販売・サービス業でやや上向いた。
インテリジェンスのまとめでは、アルバイトの平均時給は966円で、前年同月に比べて0.8%減となった。同社は「外食系や販売・サービス、工場のラインなど技能系が振るいませんね」と話すが、なかでも事務職の時給は急落しているという。
派遣社員の平均時給を調査しているエン・ジャパンは前月比1.2%減の1588円。前年同月比では1.6%減少した。リーマン・ショックの起こった08年9月から下落の一途を辿り、07年12月の調査開始以来、初めて1600円台を割り込んだ。
時給の下落について、インテリジェンスは「07年12月ごろから顕著になってきた」と話している。それまでは、03年9月以降ずっと前年比プラスで推移してきた。
時給が減っても辛抱して働くしかない
アルバイトなどの時給の下落は当面続きそうだ。外食などの飲食店や販売・サービス業は、これまでの人手不足が解消しないため時給を下げられずにいた。しかし、07年夏のサブプライム問題以降から売上げがジワジワと落ち込んで、とうとうアルバイトの時給に手をつけざるを得なくなった。
飲食店や販売・サービス業などは、むしろこれからが「下げ本番」の様相。ある百貨店は、アルバイトを交通費込みの時給で募集するようになったり、売り場や催事によって時給に差をつけたりと、実質的な引き下げに踏み切った。また、工場に勤めていた技術系や事務職の時給も07年後半あたりから下落しているが、「下げ幅が大きくなっている」という。
ただ、慢性的な人手不足に陥っている介護職の時給は、08年11月以降3か月連続で上昇しており、堅調な水準にある。インテリジェンスは、「どの程度反映されるかは不透明ですが、09年4月には介護報酬がアップされることもあって、そのあたりに期待する声は聞かれます」と話している。
総務省統計局によると、アルバイトやパート、契約・嘱託社員は全国で1472万人、雇用者全体の34.1%を占める(08年平均、雇用形態別雇用者数)。景気悪化で人員削減が正社員に及んでいることもあって、アルバイトなどで食いつなぐ人は急増中。時給が減っても、じっと辛抱して働く人が多くなりそうだ。