新築マンション価格が下がっている中、高層のタワー型マンションが注目を集めている。眺望がいい、などいい点も多いが、不安な面もある。将来行われる大規模修繕工事に相当費用がかかるのでは、という点だ。足場を組むのに費用がかさむほか、前例が少なく工事費用が算出しにくいという。
タワー型マンションの修繕積立金、目安は1平米500円
カカクコムが運営する住宅情報サイト「マンションDB」では、物件へのアクセス数に基づいた人気ランキングを地域別に毎日更新している。とりわけ人気なのは、タワー型のマンションだ。たとえば、都心部で港区にある「WORLD CITY TOWERS(ワールド シティ タワーズ)」、江東区の「パークハウス清澄白河タワー」、南部世田谷区の「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」などが上位にランクしている。
カカクコムは「あくまでもアクセス数なので、興味を持っている人が多いと言えそうです」と話している。たしかに、ふつうのサラリーマンには手が出しにくい価格の物件ではあるが、見晴らしが良く、都内へのアクセスも良いのは魅力的だ。憧れもあるのだろう。
そんなタワー型マンションだが、落とし穴もありそうだ。その一つが修繕積立金。修繕積立金とは、10~20年後の大規模修繕工事に備えて、毎月支払う費用のことだ。たとえば、前出の「ワールド シティ タワーズ」では、専有面積47.2~150.08平方メートルで、月3630円~1万1570円の積立金がかかる。
NPO関西分譲共同住宅管理組合協議会の担当者は、「タワー型マンションの修繕積立金には1平米500円程度あれば、将来の工事費用に足りるといわれています」と話す。普通のマンションだと同200~300円程度だといわれている。ただ、その水準を最初から確保しているマンションは少なく、入居後、管理組合が中心となり値上げをするのがふつうだ。
購入時はマンションを売りやすくするため、修繕費積立金が低く設定されているケースも少なくない。タワーマンションの場合は、大規模改修工事に中低層マンションの2倍ほどかかり、足場や多くの設備を必要とするために費用がかさむとされる。
「どんどん高くなる修繕積立金を本当に全員が払えるでしょうか」
築15年の超高層マンションの大規模修繕の事例を朝日新聞が2008年11月4日に取り上げている。高層階でのゴンドラ作業は風が吹くと中止となり、工事期間は10か月と長引き、3億円という費用がかかった。修繕費の3割は足場の設置代が占めたという。
社団法人高層住宅管理業協会の担当者は、大規模修繕工事の具体的な費用について、「長期修繕計画はあくまで『案』であることから、金額がいくらかかるのかは正確にはわからない。物価や材料費の影響で工事の費用が変わる可能性もある」と話している。しかも、タワー型マンションは大規模修繕工事を実施した事例は少ない。データやノウハウが少なく、工事費用が算出しにくいそうだ。
あるマンション業界の関係者によると、積立金が途中から高くなることをしらず、修繕費が払えずに立ち退きを余儀なくされてしまったケースもあったという。そして、ネット掲示板でも「管理費・修繕積立金を払えなくなる人も続出すると思いますよ。10年後、20年後にどんどん高くなる修繕積立金を本当に全員が払えるでしょうか」などと書き込まれており、大規模改修工事を不安視する向きがある。