不況で新車の販売台数が落ち込む中、ホンダのハイブリッド車「インサイト」が健闘している。189万円からという比較的安い価格設定がうけたせいもあり、2009年2月に発売を開始したところ、同月末までに月間目標の3倍にあたる1万5000台を受注した。一方、燃費の良さで勝っているのが、トヨタ自動車の「プリウス」。5月に新型が発売され、夏には高級車「レクサス」にもハイブリッド車が登場する。夏に向け、ハイブリッド市場での戦いはますます熱くなりそうだ。
インサイト、月間目標台数の3倍、1万5000台を受注
本体価格は189万円から。ホンダ、インサイト
日本自動車販売協会連合会によると、2月の国内新車販売台数は08年同月比32.4%減の21万8212台だった。そうした中で、ホンダが09年2月から発売しているハイブリッド車「インサイト」だけは、少し様子が異なるようだ。
「月間目標台数の3倍にあたる1万5000台を受注しました」
と、広報担当者は喜びを語る。
よく売れているという「フィット」の月間販売台数は8000~1万台。それを大きく上回り、「不況で新車が売れない」というのが嘘のようだ。販売店には今も多くの客が訪れている。
普通の車はエンジンを動力源とするが、ハイブリッド車はエンジンと電気で動くモーターを併用する。
インサイトの場合は、主力はエンジンで、発進時にモーターがサポートする仕組み。低速時はモーターのみで動き、高速時はエンジンだけで走る。走り方にもよるが、普通の車は燃費が1リットル15~20キロ程度であるのに対し、インサイトは30キロとなっている。
使用するガソリンが少ないので、環境への配慮はもちろん、お財布にもやさしい。08年3月頃からガソリン価格が高騰し、ピーク時は1リットル180円に達すると、ハイブリッド車への乗り換えを検討する人も増えた。
燃費がいい一方、ハイブリッド車は本体価格が高いのがネックになっていた。ホンダ「シビック・ハイブリッド」は228万9000円から、ハイブリッド車で定評があるトヨタ自動車「プリウス」は223万1000円から。同クラスの車よりも、数十万~100万円くらい高い。
ホンダはそこに目をつけて、インサイトの本体価格を189万円から、と設定した。安さを可能にしたのは、徹底したコスト削減だ。
広報担当者は、こう説明する。まず、搭載したハイブリッドシステム「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」を、従来品に比べて小型・軽量化した。中でもバッテリーボックスは、部品点数を従来比で約50%削減し、大幅にコストを減らすことに成功。加えて、車体部品の一部を「フィット」など他車と共有している。さらに、世界で年間20万台という量産体制を組むことでコストを減らした。
新型プリウス、レクサスが5月以降に登場
本体価格を下げたホンダに対し、低燃費を追求しているのが、トヨタ自動車のプリウスだ。インサイトの燃費は1リットル30キロだが、プリウスは35.5キロとなっている。
ホンダのインサイトは発進時にエンジンとモーターを併用しているが、プリウスはモーターが主。これだけでもガソリンの使用量に差が出る。プリウスが搭載しているモーターはインサイトに比べてパワーが大きく、モーターで走る距離が長く、加速性もある。
そんなプリウスの新型車が、米デトロイトで09年1月に開催された北米国際自動車ショーに出展され、世界の熱い注目を集めている。
システム全体の90%以上を新開発したガソリンエンジンに、モーターとリダクションギヤを組み合わせたハイブリッドシステム「THS II」を搭載。「世界最高レベルの燃費性能」(同社)を実現し、広報担当者によると現行プリウスよりも燃費がよく、35.5キロを上回る。
さらに、オプションでムーンルーフにソーラーパネルを新たにつけた。この電力を使用して室内の換気を行うトヨタ初のシステムだ。09年5月中旬に日本を皮切りに世界で発売する予定。高級車「レクサス」のハイブリッド車も夏頃に発売される。
一方のホンダもハイブリッド車のスポーツカータイプ「CR-Z(シーアールジー)」を2010年中に展開する。「フィット」からもハイブリッド車を2011年までに出す予定。
「ハイブリッド戦争」は、ますます激しくなりそうだ。