内定先の企業から、2009年4月の入社後も「自宅で待機」するように命じられる。こんなケースが増えているという。ネット上には実際に「自宅待機命令」を受けた学生の声が多く挙がっているが、不況の深刻化に従ってこうした目にあう学生がもっと出てくるのでは、と大学側は懸念を強めている。
給与は「6割」から「8割」と会社により幅
Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」に1月中旬、こんなカキコミがされた。4月からの新卒社員が、「三ヶ月間の自宅待機を命ぜられました。私は、切られる可能性はあるのか」というものだった。内定先の会社は、「新卒が入社すれば研修の労力を分散させなければならない」ことを理由にしていて、「我々は責任をもってあなた方を雇用します」と説明された。学生は「4月までにすべきことは何か」とも心配している。
SNSサイト「mixi」にも似たような日記がある。そのほとんどが、3月に入り内定先から突然連絡を受け、4月からの「自宅待機」を命じられているというもの。給与は「6割」から「8割」と会社により支給額に幅があり、期間は「3か月」や「半年」と通知している会社が多いようだ。これを受けて、
「(待機の期間は)試用期間中だから、下手すると正社員にならないまま切られるんじゃないか」
「自分、大丈夫なのか。生き残れるのか」
など、不安がっている学生が多い。しかし中には、
「給料もらってニート生活、スゲーじゃん!」
「働かずにして10万以上の大金もらえるとか、まじうめえwww」
と喜ぶ学生もいる。
「自宅待機」が最近になって目立ってきた
労働基準法によると、会社側の都合により労働者を休業させた場合、平均賃金の6割以上の「休業手当」を支払わなければならない。
採用をしたが仕事がない、という事業者のために、必要な費用の一部を国が助成する「雇用調整助成金」がある。08年12月から緊急雇用対策の一環として、新卒者や非正社員らについても支給の対象とした。厚生労働省の若年者雇用対策室は、
「この制度を利用して急場をしのぎ、雇用確保に努めてほしい」
という。さらに、
「各ハローワークで特別相談窓口を設けており、大学とも連携を行っている」
とも話す。
大学側の取り組みはどうなのだろうか。ある東京の私立大学のキャリアセンターは、「自宅待機を命じられた」というケースが最近になって目立ってきた、と明かし、自宅待機学生の意思にそった形のアドバイスを試みているという。
「悩んでいるのなら、一刻も早く相談に来ていただければ、全力を挙げて就職支援をします。『その会社に入りたい』と強く望んでいる場合はそれを尊重しています。今の時代、どの会社でもリスクはありますから」
また、学生への救済措置として「希望留年制度」を取り入れているほか、既卒者への就職支援も行っているので、母校に帰って求人を探してみる手もあるとアドバイスしている。
ただ、今後不況が一段と深刻化するにつれ、内定取消や自宅待機が増加するのでは、と強く懸念している。