「扉開いても、すぐ乗り込んではいけない」 エレベーター連続転落死の教訓

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   手動式扉のエレベーターで事故が連続して起きた。扉が開いて中に乗ろうとしたが、「かご」(リフト)が来ておらず、転落死、というケースだ。本来は、リフトが来ないと扉が開かない構造になっているにもかかわらずだ。専門家によると、自動扉のエレベーターも基本構造は同じ。毎日使っているマンションや会社のエレベーターでも同様の事故が起こる可能性がある。

開かないはずの扉が、開いた

   兵庫県姫路市の食品メーカー「オガワ食品協業組合」の工場で2009年2月25日、パート従業員の女性(57)が2階の荷物専用エレベーターの扉から落ち、1階と2階の間に停止していたリフトと壁の隙間に挟まって死亡した。県警姫路署が事故原因を調査中だが、女性はリフトが来ないために内部を確認しようとして、過って落ちた、とみられている。扉は手動で、乗り場側が鉄製、リフト側がじゃばらの二重式。本来はリフトが来ないと乗り場側の扉が開かない構造だった。

   1993年に工場を建てた際に、エレベーターを設置。最近も階の途中で止まることがあったが、その都度修理していた。建築基準法で定められている年1回の検査もクリアしていた。

   同様の事故はほかにも起きた。

   東京都新宿区信濃町の帝都典礼ビルで2月16日、エレベーターのリフトが来ていないのに1階乗り場の手動式扉が開き、そば店経営の男性(74)が地下部分に転落し死亡した。この扉も本来、リフトが到着しなければ開かない仕組みだった。

   日本エレベーター協会はエレベーターの構造について、こう説明する。

「乗場側の扉には常にロックがかかっています。かごが到着したときに、かご側の扉に設置されている連結ロックスイッチが乗場側扉のロックを機械的に解除する仕組みです。また、スプリングやおもりの作用で、扉は常に閉まる方向への負荷が働いている。かごが到着していない状態で扉が自動的に開くことは考えにくいです」

自動式扉でも同じ事故は起こり得る

   東京都昇降機安全協議会の担当者も、

「乗り場側の扉とかご側の扉が連結しているので、普通はありえません」

と話している。

   では、開かないはずの扉がなぜ開いたのか。考えられるとすれば、ロック装置が摩耗していた場合だ。

   建築基準法では年1回以上検査するよう定められている。検査資格を持った者がリフトの上に乗り、リフトと乗り場側の扉が連結して開閉するかを確認する。一方で、「ロック装置の摩耗は完全にはチェックできない」ともいう。

   エレベーターメーカーがロック装置の交換基準を定めている。あるメーカーは、起動頻度が一定以上で交換するとしているが、別のメーカーは装置の部品のすり減り程度で取り替える、というように異なり、基準が統一されていないという問題が浮かび上がる。

   全国にあるエレベーターは63万台(08年3月末、日本エレベーター協会調べ)。手動式扉は業務用に多く、人が乗るエレベーターでは稀だ。しかし、前出の都昇降機安全協議会の担当者は、こう指摘する。

「自動式扉でも連結ロックの構造が同じなので、同じ事故は起こり得ます」

「扉が開いたら、リフトがないかもしれない」と疑い、いちいち確認して乗る必要があるのかもしれない。

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