麻生太郎内閣の支持率が1ケタ台になる調査結果も出て、首相の求心力が極端に低下しているなか、「ポスト麻生」として急上昇しているのが財務・金融・経済財政相の与謝野馨氏だ。パフォーマンス型の麻生首相の後は、「職人気質の与謝野氏がいい」という期待感があるそうだ。与謝野氏とはどんな人物なのか。
麻生首相の9%を押さえ17%でトップ
日本経済新聞が09年2月23日付けの紙面で発表したアンケート「これからの首相適任は」によると、与謝野氏は09年1月の調査よりも支持率が7ポイント上昇し9%に。自民党支持層に限れば小泉元首相の12%、麻生首相の9%を押さえ17%でトップになった。「週刊ポスト」(09年3月6日号)では、与謝野暫定政権や、「舛添総裁・与謝野暫定総理」などを論じている。西日本新聞(09年2月21日)では、同紙記者の「予想」という形で、自民党内ではポスト麻生は与謝野氏で一致した、という情報が出たとし、
「『パフォーマンス型の麻生氏の後は、職人気質の与謝野氏がいい』という党内の期待感は少なくない」
と与謝野待望論を書いている。
小泉純一郎元首相は03年の総選挙のときに
、「前回の総選挙で与謝野さんが当選していたら、小泉ではなく、与謝野首相になっていたかもしれない」
と評価したことがある。
永田町きっての政策通として知られ、自らも「政策の職人」をアピール。08年9月に行われた自民党総裁選では麻生首相に敗れたものの、結果は2位。この時の出馬表明では、真実を国民に語り理解してもらう努力をするのが政治の責任だとし、
「改革を進めることは大事だが、優しさやあたたかさが必要。この国の豊かさを維持し、年金や医療を守り抜き、日本をいい社会として後の世代に渡したい」
などと話していた。
祖父母は歌人の与謝野鉄幹・晶子夫妻
与謝野氏は1938年8月22日生まれで、祖父母は歌人の与謝野鉄幹・晶子夫妻。父の秀氏が外交官だったことから、子供時代は中国やエジプト、英国で過ごした。麻布高校から東京大学に進み、民間企業へ就職後、中曽根康弘元首相の秘書を経て政界入りした。06年には、咽頭(いんとう)がんの手術をしたこともあって、健康面で不安があるとされていた。消費税率引き上げには意欲的で、07年11月の講演で、
「消費税(増税)なしでもやっていける、という人は物事を知らない」
などと発言し物議を醸した。
財務・金融・経済財政相を独占、事実上「与謝野内閣」
急浮上した与謝野氏待望論について、政治評論家の森田実さんはJ-CASTニュースの取材に対し、政府が経済問題を政策の重点に掲げているいま、与謝野氏が財務・金融・経済財政相を独占している現状を
「これは事実上の『与謝野内閣』といっていい」
と説明する。待望論が出た背景は、政策のゲタを与謝野氏に預けた以上、麻生首相が再び主導権を握るのではなく「与謝野政権」を続けてもらった方が「遙かにまし」で、麻生首相の度重なるおかしな言動や、中川昭一前財務・金融相の辞任騒動で誰もが現政権にうんざり。「麻生以外なら誰でもいい」という空気が充満した結果なのだという。
そして、与謝野氏が仮に首相になったとしても、総選挙で自民党は勝てない、と明言する。世界的不況の中での消費税率アップ発言。健康面でも不安。さらに「何とも暗い感じがして、それを嫌がる人もいる」。森田さんは、内閣総辞職は早ければ09年5月と読む。しかしながら今の自民党は断末魔状態。これを打破するためには、若く新鮮な首相候補を担ぎ出し、世代交代を明確に示す必要性があるが、実現は難しいとみている。