世界的な景気悪化の影響で消費意欲が急速に減退するなかで、世界恐慌や金融危機、資本主義をテーマにした「経済本」が売れている。ビジネスパーソンが多く勤務する東京・大手町や日本橋界隈の書店では、「経済論」のような、むずかしい骨太の経済本がベストセラーの上位に顔を出すほどだ。経済誌やビジネス本のダイヤモンド社は「経済本の市場は1万~2万部売れればいいほう。いまやその2倍、3倍と売れている」と絶好調ぶりを披露する。
2倍、3倍売れている
ダイヤモンド社が2008年12月に発刊した野口悠紀夫・早稲田大学大学院教授の「世界経済危機 日本の罪と罰」は初版1万5000部だったが、すでに4万部まで増刷。同社は「経済本の中でも売れている」と話している。
「金融・経済」のジャンルでは株式やFXなどの投資本が売れ筋で、6万~8万部がほぼコンスタントに売れる。そうした中で、「お堅い」経済本が4万部を記録するのは「かなりイイ感じ」という。
「週刊東洋経済」を発行する東洋経済新報社は、2月14日付で「世界経済危機」を特集した。手にした人は、30~40歳代を中心に、全体の7割を男性が占めた。同社は、「(売れ行きが)突出したとはいえないが、最近のなかでも良好なほうでした」と話している。
単行本では、「金融危機の本質は何か ファイナンス理論からのアプローチ」(野口悠紀夫著)の出だしの動きが好調。「世界経済 連鎖する危機」(中島厚志ほか共著)の売れ行きも堅調という。
経済本の中でも、「世界金融危機がなぜ起こったのか、を解説した本の売れ行きが比較的いい」とのことだ。
何とかヒントを、とビジネスパーソンも必死
書店大手の紀伊国屋書店によると、ビジネス本(社会科学書)の09年1月月間ランキング上位50冊に、「金融危機」「世界恐慌」「資本主義」のキーワードがタイトルに付けられている本は9冊あった。「資本主義はなぜ自壊したのか」(中谷巌著、集英社インターナショナル刊)が第3位、第9位に「暴走する国家 恐慌化する世界」(副島隆彦 佐藤優著、日本文芸社刊)が登場し、ベスト10入りしている。なかでも、「資本主義はなぜ自壊したのか」は08年12月発売で、同月の43位から押し上げた。
日本や世界の近未来を予測する本や、「経済学」の入門書などの骨太の経済本も伸びている。
ちなみに、07年2月の第1位は茂木健一郎著「脳を活かす勉強法」。ふだんであれば、こうした発想力や勉強法、仕事術に関する本や、資産運用や投資に関する本がランキングされるが、08年9月のリーマン・ショック以降の急激な景気悪化でランキングにも異変が起こったわけだ。新聞や雑誌などでも「金融危機」「世界恐慌」の文字を目にするようになったこともあり、それらの相乗効果で売れていることもある。
雇用不安や給与カットといった現実が身近に迫ってきたこともあって、自己防衛のために、手にした経済本から何とかヒントを得ようと探るビジネスパーソンの姿が浮き彫りにされている。