中川財務相のヨレヨレ記者会見で、各メディアの記者が財務相の変調について質問しなかったことが、新聞「声」欄などで批判されている。財務相がワインを飲んだ会見直前の昼食では、記者数人が同席したことも明らかになった。質問が出なかった理由は不明だが、「自主規制では」との指摘も出ている。
マスコミの自主規制?
「居眠り会見で 記者にも不信」
こんな投書が、朝日新聞の2009年2月18日付「声」欄に載っている。
投書したのは、千葉県在住の無職男性(70)。その中で男性は、G7終了後の会見では、中川昭一財務相(当時)の居眠りよりもむしろ、各メディアの記者たちから体調についての質問が出なかったことの方が驚いたと明かした。
ニュースの映像をみれば体調の異変は一目瞭然なのに、記者たちは何をしていたのか、というのだ。男性は、以前から国民が知りたいことでなく、ささいなことを記者が質問して政治家などに媚びているように感じていたと告白。今回のヨレヨレ会見について、「『記者団には戸惑いが広がった』(16日朝刊)とあるが、その『戸惑い』が質問として出ないことが不思議だ。私の不信感は更に募った」と結んでいる。
では、なぜ会見で記者たちは、中川財務相の体調について質問しなかったのか。財務相の名誉毀損になりかねないためか、プライベートなことを聞くのを遠慮したためなのか。
いくつかの大手の新聞社やテレビ局に、J-CASTニュースが取材すると、「その件については、コメントしていません」という回答ばかりだった。
ジャーナリストの上杉隆さんは、政治家との関係や記者クラブの存在が背景にあるとみる。
「マスコミの自主規制じゃないですか。大臣の機嫌が悪くなるからです。それがずっと続いていて、習慣になってしまっていますから」
ワイン会に同席も質問せず
ヨレヨレ会見を巡っては、各メディアの記者数人が、中川財務相がワインを飲んだ会見直前の昼食に同席していたことも明るみに出た。
毎日新聞の2009年2月18日付記事によると、財務省の国際局長が女性記者だけに声をかけ、宿泊先だった高級ホテル内のレストランに特別に招いたというのだ。中川財務相は、海外出張では、なぜか女性記者だけと毎回、飲食会をしていたという。
とすると、財務相がワインを飲んでいたことを知っていながら、会見では質問しなかったということなのか。
これに対し、読売新聞は、18日の記事で、同行記者が昼食会に同席したことは認めたうえで、「中川氏が飲酒しているところは確認していない」と弁明している。また、ネット上で名前の挙がったある民放キー局では、J-CASTニュースの取材に、記者が同席したかどうかも含め、「特にコメントすることはありません」と回答している。
もっとも、すべての記者が呼ばれたわけではない模様で、毎日新聞は、男性記者だったのか、18日の記事で、「毎日新聞の記者は、中川氏との会合には、いずれも出席しなかった」としている。この日のコラムでは、「身びいきと言われるかもしれないが、この愚行を大新聞の社説で最初に厳しく質したのは毎日新聞だけだった」とも言っている。
しかし、なぜ毎日記者が会見で質問しなかったかについては、「記事に書いてある以上のことは、説明することはありません」とだけJ-CASTニュースに答えている。