新築マンションの投げ売りが始まった。東京・渋谷の高級分譲マンションは1億1820万円から半額の5910万円に、埼玉県所沢市の2LDKは1000万円引きの2990万円に値下げ、といった具合だ。総額1000万円の購入資金をプレゼントするというやり方や、家具付き、引越費用を持つという特典付きもある。モデルルームに足を運ぶ人も増えているが、はたして今が「買い時」なのだろうか。
モデルルームに足を運ぶ人が増えている
渋谷区神山町の高級分譲マンション「エクティ神山町」。1R(ルーム)タイプは販売価格4380万円から50%オフの2190万円に、1LDKも1億1820万円から5910万円に大幅に値下げしている。また、埼玉県所沢市の2LDK新築マンションは1000万円引きの2990万円。千葉県船橋市「グランシーナ薬園台」(4LDK・2698万円)は、総額1000万円の購入資金をプレゼントするキャンペーンを行っている。
こうした値下げの効果も手伝ってか、「今が買い!」とばかりに、マンションモデルルームに足を運ぶ人が増えている。長谷工アーベストが首都圏居住者(モニター)と首都圏で受託販売したモデルルームへの来訪者にアンケートを行ったところ、「買い時だと思う」と答えたのは、モニターで19%(08年10月の前回調査では14%)、来訪者で26%(同16%)となり、いずれも増えている。
また、買い時だと思う理由については、「(マンション)価格が下がってきたから」「値引きや物品サービス等の交渉ができるから」「税制のメリットがあるから」との回答が大幅に増えており、「買い時感」が高まっている。調査は2009年1月以降、モニター2520人、来訪者472人に実施した。
マンションの販売価格は(1)土地の価格(2)建設コスト(3)業者の利益で決まる。(1)については、土地を仕入れた段階ではまだ値段が下がっていない。(2)は上がっている。
大手の物件も、今後は下がる
にもかかわらず値下げできる理由について、分譲マンション価格の調査会社、東京カンテイ(東京都品川区)市場調査部の担当者は、こう説明する。
「マンション業者が3月決算に向けて在庫を少しでも現金化するために、利益を圧縮して(販売価格を)下げています。ブランド力が弱い中堅以下で見られる傾向です。体力がある大手でも、成約者に1000万のマンション購入券が当たるとか、家具がついてくる、引越費用を持つといった特典をつけており、実質的に値下げしています。10、11月までは安定した『底値圏』が続くと思います」
一方、まだ下がる余地があるという意見もある。
「今下げているのは、値付けを高くしすぎたとか、立地条件が悪いとか、業績が悪くて手放さざるを得ない、倒産した企業の物件を買い取って安く売る、といったケースです。こうした物件は今後も出てくる可能性があります。09年がピークとなりますが、2010年も続きそうです」(不動産関係者)
また、大手の物件も、今後下がる見込みがあるという。
「大手物件は表向きに値下げしないので、売れていません。いつまでも高止まりして在庫を抱えているわけにもいきませんし、09年夏以降に下げてくるでしょう」