パナソニックが2010年3月までに国内外で計1万5000人規模の人員を削減すると発表した。国内外の生産拠点についても27カ所を閉鎖する予定で、過去最大規模のリストラを断行する。世界景気が急速に悪化し、これまでの好調な業績をけん引してきた薄型テレビなど主力のデジタル家電の販売が急減、このままでは業績改善の見通しがたたないと判断したためで、パナソニックの強い危機感が浮かび上がる。
ITバブル崩壊直後にも社員約1万3000人に早期退職
今回の人員削減は、国内と海外で約半数ずつとなり、国内では正社員のほか、派遣社員など非正規従業員も含まれる。また、世界で約230カ所ある生産拠点についても、国内で13カ所、海外ではマレーシアやフィリピンなど14カ所を08~09年度のうちに閉鎖する方針だ。国内では藤沢工場(神奈川県藤沢市)や岐阜工場(岐阜県大野町)などが対象となる。
こうした大規模リストラを実施するため、パナソニックは構造改革費を2008年11月に見込んだ1550億円より1900億円上積みし、3450億円に引き上げる。これを09年3月期に計上するため、連結最終(当期)損益は従来予想の300億円の黒字から、3800億円の大幅な赤字(前期は2818億円の黒字)に転落する見通しだ。
パナソニックはITバブルが崩壊した直後の02年3月期にも4310億円という巨額の最終赤字を出した。この当時も、社員約1万3000人を対象に早期退職などを実施し、構造改革費2500億円を投じている。今回はそれ以来、7年ぶりの大規模リストラとなったが、構造改革費は当時より1000億円も膨らむ。そして、その7割に当たる2400億円をテレビ関連に当てる計画だ。
V字回復を再現できるかは不透明
「パナソニックの顔」とも呼ばれてきた薄型テレビは、世界市場での価格の急激な下落と販売不振で、パナソニックの収益の柱という存在から一転、09年3月期には初の営業赤字に陥る見通しとなっている。このため、パナソニックは国内のパネル工場の集約を進めたうえで、チェコの組み立て工場の工程の一部をタイに移管するなど世界規模での合理化を図り、黒字化体質によみがえらせようと狙う。
09年3月期に最終赤字に転落する見通しになったとはいえ、大規模なリストラ断行の結果であることから、パナソニックは今回、市場からは評価を受けている。02年3月期の構造改革後、業績の「V字回復」を果たした成功体験も心強い。しかし「今回の金融危機と景気悪化は想定を超えている」(電機大手)という状況の中、再び業績のV字回復を再現できるかは不透明だ。景気動向次第では、いっそうのリストラが必要になる可能性もある。