週刊新潮は2009年2月19日号に、記者2人が死傷した「朝日新聞阪神支局襲撃事件」(1987年)の「実行犯」を名乗る男性の「実名告白手記」第3回を掲載した。しかしここまでの内容に、朝日新聞社や各週刊誌から疑問の声が挙がっている。
犯行声明に付着した「繊維片」と数珠の関係
週刊新潮09年2月5日号から島村征憲氏(65)が、1987年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局の襲撃を「犯行告白」した。手記の中で島村氏は、犯行にいたる経緯を「私はあくまで『実行犯』」、犯行の「依頼主」は「在日アメリカ大使館元職員の佐山(仮名)」とし、犯行当日については、記者に散弾銃2発を発射した様子を詳細に表現していた。
第3回の手記では、犯行声明を「大物右翼の野村秋介氏」に「作成依頼」したとする様子が書かれている。マスコミに送られた犯行声明文には「繊維片」が付着していたとされるが、これと、島村氏が当時つけていた「数珠」の「房」の繊維とが「一致する可能性がある」としている。
島村氏の「犯行告白」に対して朝日新聞社は、第1回手記の掲載当日(09年1月29日)の夕刊で「本事件の客観的事実と明らかに異なる点が多数ある」とし、第2回手記の掲載当日(09年2月5日)の朝刊にも再び「『事実と相違』本社事前回答」とする記事で、「週刊新潮の連載が終了した時点で内容を検証し、本紙で明らかにします」と掲載した。
「野村秋介氏」との関係に疑問?
現在までに掲載されている3回目までの手記に対し、疑問を呈する週刊誌も少なくない。
サンデー毎日(09年2月22日号)は、島村氏が犯行声明を依頼したとする「野村秋介氏」との関係に疑問を呈した。野村氏の関係者のコメントを紹介しながら、「生前の野村氏と親交のあった人々は、軒並み『野村氏関与説』を一笑に付す」としている。また、「在日アメリカ大使館元職員」に「指示」されたとする告白内容についても、新右翼団体「一水会」の木村三浩代表が「疑わしい」とコメントを寄せている。
週刊文春は2号にわたってこの問題を取り上げた。09年2月12日号では、朝日新聞社が島村氏に取材をした際の「証言」と、週刊新潮の「手記」の内容が「異なる『告白』」であったことを指摘し、第3回の手記掲載号と同日に発売された09年2月19日号では、1992年に離婚したという「元妻」がこう語っている。
「また何を言い出したんだろう、という感じですよ。あの人がこんな事件をできるわけないじゃないですか。根はいい人なんですから」
また、島村氏が池袋で右翼団体をやっていた、ということに関しても、
「東京には住んでいません。ましてや池袋に事務所なんかありませんよ」
と「証言」をしている。
週刊新潮は第3回の記事中で、「島村の『実名告白手記』掲載スタート後、本誌には新聞や雑誌などから取材の申し込みが多々寄せられた」とし、各誌からの問い合わせを紹介して反論、記事の正当性を主張している。島村氏も「私は自分でやったことを証明するのがこれほど難しいものとは思いもしませんでした」との感想を漏らしている。