製造業を中心に派遣の雇い止めや正社員切りが進むなか、2010年春に入社予定の新卒採用人数を大幅に減らしたり、採用自体を見送ったりする動きが出てきた。日産自動車は582人から若干名に、ホンダは1490人から890人に減らす。全日本空輸も総合職の採用数を09年より約4割少なくする。また、採用活動を始めている企業の中には、最終選考を後のばしにし、様子を見ながら採用数を絞るケースもあるようだ。
日産、最終的に0人になる可能性も?
日産自動車は2010年春に入社予定の新卒採用を09年度の582人から「若干名」に減らす。09年2月9日に発表した。08年度第3四半期の売上高は前年同期比34.4%減の1兆8165億円、営業損失は992億円、純損失は832億円(同日発表)。こうした状況下では、新卒を採るのは厳しいと判断した。
具体的な人数は明かしていない。最終的に0人になる可能性について、広報担当者は「何とも言えない」との回答にとどめた。
同社は00年度にも採用を大幅に減らし、技術系中心に合計157人にとどめた。2010年がそれを下回るのかは、「わからない」という。
自動車業界では日産の他にも新卒採用を減らす動きが広がっている。
ホンダは09年2月12日、2010年の新卒採用数を09年度より600人減らし、890人にすると発表した。内訳は大卒、高専、専門学校卒の技術系540人、同事務系80人、高卒、短大卒270人。03年度の772人以来、7年ぶりの減少となる。
採用見合わせも広がる
一方、全日本空輸も2010年新卒採用数を減らす。総合職は09年より約4割少ない85人程度。内訳は事務職40人、技術職45人。運航乗務員訓練生(自社養成パイロット)も1割減って45人程度。ただ、客室乗務員(契約社員)は47人増の250人を採用する。
新卒採用をやめるところも出てきた。
08年10月に日本ビクターとケンウッドが経営統合したJVC・ケンウッド・ホールディングスは2010年春の新卒採用を見送る。ビクターが新卒採用を見送るのは過去10年間で初めてで、ケンウッドも7年ぶりとなる。09年春入社予定の約70人は予定通り採用する。
パイオニアはホームページで、新卒採用に向けたエントリーを08年10月1日から受付けていたが、「中断する」と09年1月16日に発表している。
ニッポン放送、日本板硝子なども採用を見合わせることが決まっており、幅広い業種に広がっているようだ。
内定取り消しは問題なので、最終選考を引き延ばす
採用コンサルティング事業キャリアマート(東京都新宿区)の広報担当者は、08年7月頃から2010年春の新卒採用に異変が見られたと明かす。
「例年7~8月に就職情報サイトへの広告掲載を(企業に)提案しますが、2010年については採用にかかる予算を半分にするとか、採用数自体を減らすという話を人事担当者から耳にしていました。業種別では製造、不動産、金融が多いですね」
採用予定数を少なくして、今後の業績次第で増減させるという企業もあるほか、こんな動きもある。
「説明会から最終選考までの期間が通常は約1か月のところ、2倍に伸びています。内定してから取り消すと問題になりますので、最終選考を引っ張っているんです」
就職サイト「リクナビ」を運営するリクルート。広報担当者は、
「就職氷河期に多くの企業が新卒採用をやめた結果、一部の年齢層が欠如し、大きな問題になりました。その教訓もあって、新卒を採りたいという意欲には底堅いものがあります。そうは言っても、景気回復の見通しが立たず、採用数が現時点でフィックスしていない企業が多いです」
と話している。
楽天リサーチと楽天グループのみんなの就職が人事担当者500人に実施した調査によると、2010年度新卒採用人数は「09年度に比べ横ばい」(41.2%)、「減らす予定」(26.8%)、「09年度は新卒採用を実施したが、10年度は実施しない」(5.6%)となっている。調査は09年1月26~27日に実施した。しかし、経済状況が悪化するに従って、さらに冷え込むのは確実だ。