「命の砦」3次救急が崩壊寸前 鳥取大で救急専門医が全員退職

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   「命の砦」と呼ばれ、瀕死の患者を受け入れる3次救急医療機関が、地方で崩壊寸前だ。鳥取県では指定2病院のうちの一つ、鳥取大学医学部付属病院の救急科専門医4人全員が2009年3月末で退職する。もう一つの県立病院でも救急専門医は1人しかおらず、他科の先生が兼務して、なんとかやっている状態だ。救命医療に携わる医師たちは、「全国的に地方の救急医療が破綻してきている」と指摘する。

「24時間あいている便利な病院だと思われている」

   鳥取大学医学部付属病院(米子市)の救命救急センターに勤務する救急科専門医全員が2009年3月末で辞める。退職するのは、センター開設時からセンター長を務める八木啓一教授(54)や准教授ら4人。八木教授は09年2月4日の記者会見で、理由について、「救急専門医を育てようと頑張ってきたが、様々な問題で辞める部下を引き留められなかった」などと語った。04年から現在の臨床研修制度が始まり、新人医師が自由に研修先を選べるようになったことも、若手流出を早めた。残った医師も負担が増えて辞めていき、慢性的な人手不足に陥っている。教授が当直することもあったという。

   救命救急センターとは、心肺停止など命に関わる患者を受け入れる「3次救急医療」機関で、「命の砦」とも呼ばれている。同病院によると07年度は年間約1万2965人の患者を受け入れた。このうち症状が重い患者は約900人で、ほとんどが救命センターにかかる必要がない軽傷患者だった。八木教授は会見で「救急医を時間外の番人としか思っていない人がたくさんいる」と述べており、患者のモラルのなさも忙しさに拍車をかけた。

   県内で救命救急センターに指定されているのは、鳥大病院のほかに鳥取県立中央病院(鳥取市)がある。ここも人手が不足しており、救急専門医は1人で、麻酔医、胸部外科医が兼務している。07年度は1万8580人の救急患者を受け入れており、必要に応じて他科や研修医に応援を要請している。ある職員は、

「本来は救急医療を行う場所ですが、コンビニのように24時間あいている便利な病院だと思われています。しかし、(軽症患者が)来てしまったら受け付けない、とは言えません」

ともらす。

   「仕事で時間内にかかりつけの病院に行けなかった」という理由で夜間に来る人もいる。また時間外に限らず、大きい病院のほうが安心だという外来患者も増えており、医師の確保に努めていても対応しきれない、と頭を抱える。

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