花粉症の原因となるスギ花粉が本格的に飛び始めるシーズンを目前に控え、新たな試みが始まっている。宮崎市で、「花粉の量が通常の100分の1」という「少花粉スギ」の植林が進んでいるのだ。全部のスギが「少花粉スギ」に入れ替わるまでには長い時間がかかるが、地元の森林組合では「出来ることから、少しずつやっていければ」と意気込んでいる。
3月末までに、民有林25ヘクタールに約7万本
春先には花粉症に悩まされる人も多いが、2009年も例外ではなさそうだ。環境省が2009年1月30日に発表した「花粉総飛散量等の予測(確定版)」によると、スギ花粉の量は、関東・東海地区などは「ほぼ例年並み」とされている一方、近畿・四国地方では、「例年よりやや多くなる」と予測されている。西に行くほど状況は厳しくなっている模様で、四国の大部分と九州の一部では、「例年の1.5倍程度」の花粉が飛ぶのだという。
そんな中、花粉を減らそうという試みが本格化しつつある。スギ材生産量が日本一の宮崎県では、花粉の量が「他品種に比べて100分の1」という品種「高岡署1号」の植林が本格化しつつあるのだ。
植林を行っているのは、宮崎中央森林組合(宮崎市、長友忍組合長)。同組合では、09年1月末に植林を開始し、「花粉症シーズン」が本格化する3月末までには、民有林25ヘクタールに約7万本を植えたい考えだ。これだけ大規模に「少花粉スギ」が植林されるのは、全国でも珍しい。
「医療関係の財源からも補助金をいただきたい」
ただ、この「高岡署1号」は、特に「新開発」された品種だという訳ではない。スギの木は、植えてから切り倒せる程度に成長するには、少なくとも40年はかかるが、森林組合の長友組合長によると、「高岡署1号」が注目されるようになったのは、ここ数年のことだという。長友組合長も、
「『高岡署1号』を切り倒してみたところ、『ほとんど花が付いていない』というので、注目されたんです。花粉症の問題がクローズアップされていることもあって、『もっと活用していこう』ということになりました」
と振り返る。
08年のシーズンに植林できたのは3000本にとどまっていたが、09年には苗木の生産体制も整った。もっとも、宮崎市内のスギ林の面積は、国有林と民有林を合わせると3万3000ヘクタール以上。すべてのスギ林が「少花粉スギ」に入れ替わるには長い時間がかかりそうだが、長友組合長は
「少しずつ、できることから進めていきたい」
と意義込んでいる。
なお、宮崎県では06年4月、県民税に上乗せする形で「森林環境税」を導入。今回のプロジェクトも、同税を活用した「花粉の少ない苗木生産等促進事業」の一環として行われているが、長友組合長は
「医療費削減にも役立つはずなので、医療関係の財源からも補助金をいただきたいぐらいです(笑)」
とも話していた。