ブログ炎上事件で、お笑い男性タレントのスマイリーキクチさんは、中傷や脅迫が相次ぐ中でコメント欄を4か月近く閉鎖していなかった。ファンとのコミュニケーションを重視したからとみられている。コメント欄は閉鎖すべきだったのだろうか。
書き込みはいったんすべて反映されるシステムだった
事件報道を説明したスマイリーキクチさんの公式ブログ
ブログのコメント欄は通常、開設者が希望すれば、閉鎖することができる。警視庁が摘発に着手した今回の炎上事件では、スマイリーキクチさん(37)は、アメーバブログを開設した2008年1月から4月までコメント欄を開放。その間、「殺す」などといった脅迫も含め、書き込みが相次ぐ「炎上」現象が続いていた。東京・足立区の女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人と勝手に決めつけられたわけだ。
アメブロを運営するサイバーエージェントによると、スマイリーさんについても、著名人ブログの標準サービスとして、同社の監視体制を敷いていた。しかし、当時は、書き込みはすべて反映され、誹謗・中傷などが見つかれば、15分以内に削除するシステムになっていた。このため、短時間ではあるが、名誉毀損にもなりうる書き込みが多くの人の目に触れることになった。
コンクリ詰め殺人と関連づける誹謗・中傷は、10年ほど前から続いていた。その結果、事務所ホームページの掲示板が炎上して、数年前に掲示板が閉鎖に追い込まれている。
スマイリーさんは今回、なぜブログのコメント欄を同様に閉鎖しなかったのか。
事件報道について説明したブログの09年2月5日付日記でも、所属事務所の太田プロダクションの報道発表でも、その点については触れていない。ただ、関係者は、「コメントを書き込みたいのに掲載されないと、逆に腹を立てて逆恨みされます」と漏らす。閉鎖しても2ちゃんねるなどに飛び火するだけと考えた面もあるようだ。また、事務所掲示板が閉鎖され、ファンとのコミュニケーションの場をこれ以上失いたくないとの思いもあったらしい。
「今は安心できるブログ運営になっており、炎上などはありません」
もっとも、コメント欄を閉鎖しなかったことで、誹謗・中傷に寛容と見なされた可能性はある。
ネット上の問題に詳しい紀藤正樹弁護士は、2009年2月6日発行の東京スポーツの記事で、ブログなら削除やコメント禁止などの対処法があったため、警視庁が名誉毀損の疑いのある18人を逮捕せずに、書類送検する方針に留めたとの見方を示している。スマイリーさんが対処不可能な2ちゃんねるなどへの一方的な書き込みなら、逮捕していたはずだというのだ。
一方で、「炎上」対策も進んでいる。アメブロでは、08年5月から、著名人ブログのコメントが事前承認システムになった。監視会社がチェックして問題がなければ、30分以内に反映されるものだ。もちろん、問題があれば削除される。スマイリーさんについては、誹謗・中傷が相次いだため、特別に前倒しして4月から事前承認制になっている。運営するサイバーエージェントでは、「今は安心できるブログ運営になっており、炎上などはありません」としている。
また、ヤフーでは、ブログやニュースのコメント欄では、同社によるパトロールや読者からの申告システムはあるが、書き込みはいったんすべて反映される。その一方で、ブログでは、ユーザーIDに責任が持たされており、ニュースでは、09年2月5日から、コメント欄に「私はそう思わない」のボタンが加えられ、ユーザーIDの一部も公開することになった。このため、広報担当者は、「誹謗・中傷に対する牽制効果があり、これまでに炎上などは聞いていません」と話している。