週刊新潮の記事を巡り、裁判で新潮社社長の賠償責任まで認定された。名誉毀損を防ぐための研修やチェック体制が十分でなかったというのだ。一方、新潮社側は「編集権の独立」を訴えていた。どこまで、経営者の責任が問われるべきなのか。
新潮社側は、「編集権の独立」を主張
「新潮社の名誉毀損は、度重なっているんですよ。少しは反省してもらいたいと思います」
東京地裁は2009年2月4日、大相撲の貴乃花親方夫妻を原告とする訴訟の判決で、週刊新潮側に計約375万円の損害賠償支払いと謝罪広告の掲載を命じた。これに対し、親方夫妻の関係者は、地裁判決をおおむね評価して、こう新潮社側に注文を付けた。
裁判中は、遺産相続でのトラブルや八百長などを報じた5つの記事について争われ、いずれも伝聞情報だけで裏付け取材がないとされ、名誉毀損が認定された。
この判決では、新潮社の社長までが賠償責任の対象にされたことが異例だ。取締役の責任を定めた旧商法の規定に基づき、経営者として名誉毀損を防ぐための対策が不十分だったというのだ。
判決では、弁護士を交えた勉強会が2年に1回ほどしかなく、編集部を監督する担当取締役は、毎週原稿に目を通して編集長にいくつか質問する程度だったと指摘。社長が業務の統括責任者として、各種の研修や出版前のチェック体制を充実させ、出版後も第3者委員会に点検してもらうべきだと述べた。
裁判中は、新潮社側は、「編集権の独立」を主張した。が、判決は、社長が名誉毀損防止の義務を果たすことはそれと矛盾しないと退けた。
地裁が社長の責任まで追及したのは、名誉毀損が5つもの記事で度重なっていると考え、それを重んじたためのようだ。