自動車大手が系列下請けに「正社員派遣」 人材押しつけにならないのか

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   販売不振が深刻化する大手自動車メーカーは派遣社員や期間工の削減を進めている。その一方で、正社員の「雇用維持」のために、系列の部品メーカーなどに数百人単位で派遣する動きも出てきた。給与は基本的には自動車メーカーが支払う。しかし、受け入れ側も仕事が減り、派遣社員らの削減を進めている最中で、人材の「押しつけ」にもなりかねない。

日産が200人弱を系列部品会社に派遣

   日産自動車は正社員200人程度を、「業務応援」という形で系列部品会社への派遣を進めている。九州工場(福岡県苅田町)など3工場で働く社員が対象で、給与は日産が支払う。

   受け入れ先の1つとなっているのが、カーエアコン、メーターなど内装製品を製造するカルソニックカンセイ(さいたま市)だ。同社の広報担当者によると、09年2月から日産社員を受け入れている。期間は2月いっぱいとするが、今後の生産計画次第で延長する。

「給与は日産が負担して、受け入れ側にはまるまるメリットになるかのように報じられていますが、うちの方でもコストが全くかからないわけでもなく、実情は異なります」

と明かす。

   さらに、「状況次第では(派遣社員を雇うのと)同じくらいになるかもしれない」と話しており、「歓迎」ムードではないようだ。

   しかも、同社は減産のあおりを受けて、09年1月時点で派遣社員800人を削減したばかり。それでも仕事があるのだろうか。これについては、

「(日産の)系列会社なので、グループ全体の雇用対策として考えなければなりません」

と話すにとどめている。

三菱は国内販売会社に派遣

   三菱自動車は09年2月4日、3月期(08年4月1日~09年3月31日)業績予想の修正を発表した。売上高2兆100億円(前回予想2兆3600億円)、営業利益50億円(同500億円)の見通し。当期利益は200億円の黒字から600億円の赤字に修正した。

   同時に、緊急の人材有効活用策として正社員約170人を国内販売会社に派遣する方針を打ち出した。

   大幅に減産し、非正規従業員を減らす計画を立てているトヨタ自動車。正社員の関連会社への派遣については、「今のところ決まっていない」としている。

   一方、日本自動車販売協会連合会が09年2月2日に発表した1月の新車販売台数(軽自動車を除く)は、前年同月比27.9%減の17万4281台で、6か月連続で前年を下回っている。ブランド別では三菱自動車が36.3%減、マツダが29.2%減、日産自動車が24.6%減、ホンダが23.4%減、トヨタ自動車が22.5%減。いずれも大幅に落としており、「正社員派遣」の動きは広がる可能性もある。

   部品メーカーの業界団体、日本自動車部品工業会の広報担当者によると、自動車メーカーの「雇用維持」を目的とした関連会社への人材の「押しつけ」は、「今までにも聞いたことがない」。

「苦しいのは自動車メーカーだけでなく部品メーカーも同じで、受注が半分近くに減り、資金繰りができない状態です。給与は派遣元が負担するといっても、受け入れればコストはかかりますし、経営が厳しくなると思います」

と訴えている。

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