世界的な景気悪化と円高が進み、電機大手はどこも2009年3月期連結最終損益が数千億の赤字になる見通しと、総崩れ状態だ。そうした中で、三菱電機は最終利益を1200億円から100億円に下方修正したが、黒字を死守する構えだ。家電や自動車などの個人消費財に比べて、需要変動が小さい法人向け事業に「選択と集中」したことが功を奏した。
「重電システムなどのB to Bが比較的よかった」
電機大手は続々と2009年3月期の連結最終損益見通しを下方修正している。日立製作所が過去最悪の7000億円、東芝が2800億円、ソニーも1500億円の最終赤字を予想している。
かつて半導体と原子力発電に「選択と集中」してもてはやされた東芝は、半導体不況のあおりを受けて「沈没」。他メーカーとの事業統合を模索しているとも報じられている。グループ全体で3月末までに派遣社員を4500人削減するなど、雇用にも深刻な影響が及んでいる。
三菱電機は09年2月2日、3月期の業績見通しを下方修正した。売上高が3兆6000億円(従来予想は3兆9000億円)、営業利益が1200億円(2200億円)、最終利益が100億円(1200億円)の見込み。
世界的な景気後退下で需要減少や円高が進み、主力の産業メカトロニクスや電子デバイス、家庭電器の各部門で売上げ減となっている。45%出資している半導体大手、ルネサステクノロジも業績が悪化している。
それにもかかわらず100億円の黒字を確保できる理由について、三菱電機広報課の担当者はこう説明する。
「上期まで各部門で売上げを出しており、貯金を確保していたこと、第3四半期については重電システムなどのB to B(会社間取引)が比較的よかったことが挙げられます」
「エコブーム」で太陽光発電も好調
08年第3四半期(4~12月)の業績は、売上高が前年同期比3%減の2兆7063億円、営業利益が13%減の1685億円、最終利益が62%減の511億円。
水力・火力・原子力発電に使われる各種発電装置の設計、開発、製造などを行う重電システム部門は、売上高が前年同期比102%の6724億円、営業利益が同比75億円増の446億円。
「国内やアメリカをはじめとする海外で、発電機の受注・売上とも前年同期を上回りました」
と話す。
「エコブーム」で注目を集める太陽光発電も好調だ。欧州をはじめとする海外の工場や大型施設からの受注が増えている。「今後も安定して伸びていく分野だ」とみて、力を入れていく。
情報通信システム部門は売上高が前年同期比95%の3910億円と落ち込んでいるが、営業利益は同143億円増の137億円。企業向けの大型サーバーやソフト、ブロードバンド用光アクセス装置などの需要が伸びた。そのほか、収益性に乏しい携帯電話事業を08年に撤退し、赤字がなくなったことも大きくプラスに転じた。
家電や自動車など個人消費財に比べて、需要変動が小さい法人向け事業に「選択と集中」したことが赤字転落を防いだ。ただ、企業経営が悪化している中で今後とも、「選択と集中」を強めるのかについては慎重な構えだ。