宮城県「崩壊寸前」茨城県「中堅機関はがん治療中止」
宮城県では「崩壊寸前」という声も上がっている。茨城県は、「県内中堅の医療機関の産婦人科で減員され、分娩取り扱い中止とともに婦人科がん治療の多くを中止した。かなりの数の重症症例が筑波大学などに紹介されている」。千葉県は、「婦人科腫瘍専門医はすべての婦人科に存在しているわけではなく、県内においても地域格差があるのが現状である」。富山県は「(地域での分娩施設が減少したことで)分娩取り扱い数の増加が、婦人科診療を困難にしている」。他にも群馬、三重、熊本、鹿児島などで問題となっている。一方で、山口県は「大きい問題があるとは認識していません」。愛媛県は「対応できているものと思われます」と答えており、地域によって差が出ている。
その理由について、吉川教授はこう説明する。
「お産の場合は自宅近くで生みたいという人が多く、自宅から20―30キロ圏内の病院を選ぶ。一方、がんの場合は自宅から100キロ離れていても、いい病院があれば遠くに行く。そのため一部の病院でのみ患者が増えているが、全体では増えていない所もあり、ばらつきが出ています。婦人科医不足が大騒ぎになっていない理由でもあります」
同調査で女性がんの患者が2.26倍に増えた三重大学医学部付属病院。 総務課の担当者は、
「(産婦人科の医師に聞いたところ)近隣の病院で放射線治療を行わなくなり、大学病院に集中しています。また、患者の『大病院志向』も高まっており、産婦人科の患者が増えています。当院の場合は産婦人科医よりも麻酔医が不足しており、手術が予定通りに運ばず、患者さんに待っていただくという事態も出てきています」
と話す。
産科医不足が叫ばれ、とかく周産期医療の改善が指摘されているが、それだけではだめで、産婦人科医療全体を変えていく必要がありそうだ。