「預金者のほうが冷静で、かしこい」
そんなとき、第二地銀最大手の札幌北洋ホールディングス(北洋銀行)が名乗りを挙げた。これに鹿児島県の南日本銀行や福井県の福邦銀行が続いた。香川銀行と徳島銀行が経営統合を発表するなど、再編への動きが高まったことで、「申請しやすい雰囲気ができあがってきた」(地銀幹部)という。
地銀は、「地元企業や預金者の理解が得られる」と感じとったようだ。ある第二地銀の幹部は、「預金者のほうが冷静で、かしこい」と苦笑する。「公的資金を入れた銀行はこれまで潰れた例がないので、入れたほうが安心できるとみている」という。
実際には、栃木県の足利銀行(現・足利ホールディングス)が公的資金を注入したあとに、経営破たんし一時国有化されたが、他に例はない。1月29日に、十六銀行が50億円の資本支援を決めた岐阜銀行も、東日本銀行や千葉興業銀行などの規模の小さな地銀も公的資金を入れて生き残っている。
地銀の場合、大株主が大手銀行や生損保なので、公的資金の受け入れを反対される可能性はきわめて低い。外国人株主が少なくないが、いまなら「ノー」とは言えまい。バブル崩壊後の金融危機のとき、地銀の要請に応じて増資を引き受けた地場企業も少なくなく、経営破たんで株券が紙くずになってしまっては企業も困る。
地場企業と預金者を「人質」に、経営者が「入れる」と決断すれば、すんなり生き残れるわけだ。