破産管財人の方針決定まで工事ストップ
富士ハウスの経営破綻を受け、財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」には注文主からの電話相談に応じる窓口が設けられた。1月31日は休日返上で職員が対応したが、受付開始から電話が鳴り続け、「昼ごはんを食べる間もないぐらい」だった。
「多かったのは、家を建築中の人からの相談。これからどうなるのか心配ということだが、破産管財人がどういう方針で進めていくのか何もオープンにされていないので、今後の具体的なことについては答えるのがむずかしかった。破産手続きは法律的な問題で、工事の段階や代金の支払い状況によっても対応が変わってくる。個別の処理については弁護士に聞いてもらったほうがいい」
と同センターの職員は、地元の弁護士会に相談することをすすめている。また、建築関係の訴訟を数多くてがけた経験をもつ牧野二郎弁護士は
「規模の大きい会社なのに、いきなり破産申請というのは珍しい。同じ経営破綻でも民事再生や会社更生の場合は会社を生かして事業継続を目指すことができるが、破産手続きとなると、注文主は非常に厳しい立場に置かれる。最悪の場合、手付金と中間金を払ったのに家は完成できず、払ったお金もほとんど返ってこないということも考えられる」
と指摘する。
今回のように建築途中で住宅メーカーが倒産してしまった場合に注文主を保護するため、前払い金や工事の追加費用を保証したり、工事を引き継いで完成させる業者をあっせんしたりする「住宅完成保証」という制度もある。しかし完成保証制度に加入するかどうかは業者の自由で、富士ハウスの場合は「どうやら完成保証は入っていないようだ」(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)という。
富士ハウスが建設していた住宅は、破産管財人が方針を決定するまで、工事が中断することになる。マイホーム完成が突然遠のいた注文主は途方にくれているが、ある業界関係者は「他社の注文主もひとごとではない」と次のように警告する。
「去年の夏以降、住宅業界は受注が急激に減り、資金繰りの苦しい業者が多数存在している。いまの景気状況からすると、富士ハウスと同様の事例が今後も発生する可能性がある。これから家を建てようと考えている消費者は自己防衛策として、事業者が完成保証と住宅瑕疵担保責任保険の両方を扱っているかどうか、書面等で確認することが不可欠だ」