「罰金20万払って出てこられるのであれば、それでいい」
――そうなると、「本当はやっていなくても、自白をしてしまう」ということが起こる訳ですね?
井上 正直なところ、「罰金20万払って出てこられるのであれば、それでいい」となってしまうこともあるんです。
示談金は、多い時だと200万。社会的地位がある人ほど、「500万払ってでも示談したい」と、女性側からの訴えを取り下げてもらいたいものです。
「500万だったら無理だけど、罰金の20万円だったらすぐ払う」みたいな人は、いっぱいいると思います。従って、「痴漢冤罪」は、相当数いるのではないかと思います。
――この犯罪の場合、示談して女性側が訴えを取り下げるとどうなるんでしょう?「チャラ」になるんですか?
井上 痴漢は親告罪ではないのですが、女性側が訴えを取り下げるのであれば、検察としては、もはや起訴する価値はないでしょう。起訴されなくなる、と思って間違いないでしょう。
――逆に、否認を続けると、どうなるんですか?
井上 起訴されます。女性の言い分が余りにも変で「荒唐無稽」ということになると、起訴されないこともあるのですが、「あり得る」という可能性があるだけで、起訴されてしまいます。
女性の証人尋問と被告人質問をして、有力な証拠がなければ、二人に言い分を比べて、裁判官は「こっちが勝ち」とやるのですが、過去の例だと、ほとんどが有罪です。徹底的に否認して争っていると、「反省してない」と、量刑が重くなってしまう。
――やっていないことは、反省のしようがないですよね(苦笑)。
井上 裁判官のセリフまで決まっていて、「可憐な女子高生が羞恥心を押して『痴漢された』と言っているのだから、間違いない。証拠上明白であるにもかかわらず、被告人がシラを切りとおしている。反省の心は微塵もない」といった具合です(笑)。判決文は、起承転結が、ちゃんと決まっているんです。
(手を下着の)中まで入れたとされた場合は、強制わいせつ罪で起訴されることがあって、今言ったようなことを判決文に書かれると、懲役の実刑になってしまいます。前科もない普通のサラリーマンが、突然刑務所に1年間入る、ということになってしまう。条例違反であれば罰金20万ですみますけれど。
否認すると「反省していない」になってしまうので、強制わいせつの場合「無罪か実刑か」になります。実刑判決を受けると、社会的には終わりです。会社はクビになってしまいますし、社会的に復活不能ですよね。引っ越しでもして、全く別のことでも始めない限り無理でしょう。