電車の中で「痴漢です」! 叫ばれたらどうしたらいいのか
弁護士・井上薫さんに聞く

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容疑認めないと起訴後も、2~3か月出られない

――その後、警察で「逮捕」されてしまうんですか?

井上   どの段階で「逮捕」になるのかは不明確なのですが、おそらく、書類上は「現行犯逮捕」になるでしょう。「ホームの上で、女性に現行犯逮捕された」と。警察官は「その身柄を引き取った」という形になります。私人が現行犯逮捕した場合は、容疑者の身柄を司法警察職員に引き渡さないといけない、という規定がありますので、それに従って「身柄を受け取った」という書類が出来てしまう。ですから、警察で逮捕されたのではなくて、駅のホーム上で逮捕されたことになってしまう。でも、これはインチキです。逮捕というのは、手錠をかけたり取り押さえたりして、物理的に動けない状態にすることですが、逮捕されていないのに、逮捕されたことにしてしまっているんです。
   この「インチキ」が、後で大問題になる。勾留の段階では逮捕前置主義(違法な逮捕が行われた場合、それを根拠に行われた勾留も違法だとする考え方)という考え方がとれてられていますが、逮捕がないのに、いきなり勾留されてしまう。でも裁判官は書類だけを見て「逮捕が前にあった」と、だまされる。
   裁判官もその点を調べようとはしないんですよね。みんなが少しずつ「ズル」をしている。こういうことの積み重ねで、「ベルトコンベヤー」のシステムは維持されているんです。

――警察での取り調べが始まって、「私はやってない」と容疑を否認すると、どうなるのでしょうか。

井上   「やったんだろ」「言えばすぐに出してやる」「容疑を認めないと、身柄が拘束されたまま起訴されて、起訴された後も、2~3か月は出られない」といったことを言われます。痴漢にかぎらず、どの犯罪でもそうです。要するに、「自白すれば、早く出してやる」ということです。「仮に起訴されても、保釈には同意してやるから」とか。そういう「エサ」をつるす訳です。

――取り調べ段階で否認するのは難しいんですか?

井上   やはり身柄拘束というのはダメージが大きいですから。出られるためならと、自白をしてしまうことが多いです。一度つかまると、短くて1か月、長くて2~3か月は出てこられません。突然1か月いなくなったら、大問題ですよね。警察官から「自白をしないと大変なことになる」と言われ続けると、容疑を否認するための「やる気」がなくなってしまうものです。
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