岡山県美咲町では「たまごかけご飯」の専門店がオープン、1年間で7万食以上を売り上げた。観光客も増え、これで「町おこしを」と意気込んでいる。さらに、「たまごかけご飯」専門店は各地に出現、どこもにぎわっている。たまごかけご飯の魅力とは何か?
「こんなに反響があるとは思わなかった」
「食堂かめっち。」で売られている、たまごかけご飯
岡山県美咲町が、たまごかけご飯専門店「食堂かめっち。」をオープンしたのは08年1月22日のこと。ご飯、たまご、味噌汁、つけものをセットにした「黄福(こうふく)定食」が300円。当初の予想を大きく上回る、年間7万食以上を売り上げ、なかなかの評判だ。平日は100人~200人が来店、休日ともなると300~400人近くがつめかける。店舗内が18席しかないという理由もあるが、ピーク時は1時間以上待つこともある。
美咲町が「『たまごかけご飯』で町おこしを」と考えたのは、合併した直後で、観光地もなく、知名度が低かったことからだ。そこで、美咲町出身の偉人・岸田吟香氏が「たまごかけご飯」を愛好し、日本に広めた説があることや、町内には西日本最大級の養鶏場もあったことから「たまごかけご飯」に注目した。
「たまご目当てに誰が来るのか?」といった議論もあったというが、これが大当たり。全国からお客さんが来ているそうだ。美咲町役場・産業観光課の担当者は、「こんなに反響があるとは思わなかった。(お客さんがこれほど詰めかけた理由は)わかりません。たまたま不況に強かったのか。安価なのが受けたのか……」と驚きを隠せない。また、町内では、たまごかけご飯をメニューに加える料理店が相次いでいるそうだ。
頭文字「TKG」として人気に火がつく
また、「たまごかけご飯」専門店は全国各地で開店している。兵庫県豊岡市では07年3月に「たまごかけごはん 但熊(たんくま)」をオープン。350円の「たまごかけご飯定食」を提供している。オープン以来3年が経つが、計5万人以上がおとずれたという。「子供が好きと言ってくれるのが一番うれしい」と担当者。ほかには、京都市伏見区には「たまごかけごはん なかま」という専門店もある。
もっとも、たまごかけご飯は現在、「T.K.G.」という名称で一躍人気となっている。「T.K.G.」とは、たまごかけご飯の頭文字をとったもの。火付け役は、読売連合広告社が07年9月に発売した「365日たまごかけごはんの本」だ。
本の中で369のユニークなたまごかけご飯(=T.K.G.)のレシピが紹介され、「たまごかけご飯=T.K.G.」という認識が広がった。08年夏頃から、メディアに取り上げられたことや口コミで広まったこともあり、合計10万部が売れている。
「365日たまごかけごはんの本」の企画者で、読売連合広告社の森田明雄さんは、「たまごかけご飯」がうけている理由について、
「(たまごかけご飯は)なんにでも合いますし、子供でも失敗せずに作れるところが幅広い人気を集めているのではないでしょうか。また、『自分で作る』ということも新鮮なのでしょう。実際、(「365日たまごかけごはんの本」は)小学校の先生が買っていき、子たちに紹介するなんていうケースも多いみたいですよ」
と話している。