青少年の有害サイトへのアクセスが問題化するなか、18歳未満を対象にしたフィルタリング(アクセス制限)サービスの「自動適用」が2009年1月30日から始まった。業界団体が「健全」だと認定していない「コミュニケーションサイト」はアクセスできなくなる。有名サイトでは、SNS大手のmixiがスタート当日に認定を受けギリギリ間に合ったが、芸能人ブログで人気のアメーバブログはまだ認定がなく、「中高生の間では混乱も起きそうだ」という声もある。
「アメブロ」はアクセス制限の対象に
NTTドコモは1月30日、18歳未満の契約者に対するフィルタリングサービスの「自動適用」を始めた。これまでは、同サービスは希望者のみが申し込んで利用する仕組みだったが、特に申し込まなくても、自動的に同サービスが適用されるようになった。この日適用が始まったのは、18歳未満で、1月~4月生まれの契約者。ドコモの5月~12月生まれの契約者や、au・ソフトバンクの18歳未満の契約者に対しても、2月以降、順次適用される予定だ。
アクセス制限の対象となるのは、アダルトサイトや出会い系サイトなどの他に、掲示板に書き込みができる「コミュニケーション」と呼ばれるカテゴリーのサイト。「コミュニケーション」のカテゴリーには、大手SNS「モバゲータウン」や「魔法のiらんど」などが含まれるが、これら2サイトは、業界団体のモバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)がすでに「健全サイト」として認定しており、フィルタリング適用後も引き続きアクセス可能だ。
しかし認定サイトの数は「GREE」「MySpaceモバイル」など18にとどまっている。SNS大手のmixiは、自動適用の開始当日に認定が発表されたばかりだ。ミクシィは24時間365日体制のサイトパトロールを導入したほか、悪質な活動を行うユーザーをすばやく察知・活動を阻止するシステムの構築、青少年にふさわしくない一部のレビュー・広告の閲覧制限を設けた。
逆に言えば、認定を受けておらず「コミュニケーションサイト」に分類された掲示板やブログサイトは、アクセスができなくなってしまう。この現状に対して、「中高生の間では混乱も起きそうだ」(日経新聞09年1月28日夕刊)などと、悪影響を指摘する声も出てきている。
実際、認定を受けていない大手ブログサイト「アメーバブログ」では、
「2009年2月よりAmebaモバイルがご利用いただけなくなる可能性があります。引き続きご覧いただくためにはフィルタリング解除の手続きが必要になります」
との注意書きがあり、アクセス制限の対象になることが分かる。
「家庭で携帯利用のあり方を話し合ういい機会」との声も
だが、「ケータイ世界の子どもたち」(講談社現代新書)などの著書がある、千葉大学教育学部の藤川大祐准教授は、影響は限定的との見方だ。
「現状では(アクセス制限が自動適用される)子ども名義で契約がされているケースは非常に少なく、高校生でも、保護者名義での契約となっているのが一般的と言ってもいいでしょう」
として、「今回の措置で影響を受ける中高生は少ないはず」との見方だ。さらに、
「子ども名義であっても、保護者からの申し出があればアクセス制限を解除することが可能で、『保護者に頼み込んでアクセス制限を外してもらった』というケースも多いです。むしろ、これを機に家族で携帯電話利用のあり方について話し合うこと自体に意味があるのでは」
とも話している。
また、EMAの認定を受けるためのハードルの高さを指摘する声もある。EMAの認定を受けるためには「基本方針」「監視体制」「ユーザー対応」「啓発・教育」の大きく4つの分野、合計では22項目のすべてをサイトが満たすことを求めている。具体的には、24時間の監視体制などを整備することなどが必要とされ、サイト運営者には、それなりの負担を求めている。
一方、前出の藤川准教授は、「ENAの認定基準は厳しいかもしれないが、基本的にはそれで良いのでは」との立場で、
「子どもに安心して利用させるためには、相応の厳しい基準が必要。中には、(EMAの認定基準のハードルの高さから) 認定をあきらめるサイトも出てくるでしょうが、今後は『一定のコストを負担して安全性を確保できるサイトだけが青少年の利用にふさわしい』という考え方が常識になるべきです」
と指摘している。