元巨人の桑田さんや競艇選手が、高卒の学歴で早大大学院に合格したことが話題になっている。その反響で、同大には、「入学できる方法を教えて」といった質問が相次いでいるというのだ。一方で、大学の価値否定という批判の声も。どうして合格できるのか。
「経験や論文などの課題、面接などを勘案」
桑田真澄さん合格の早稲田大学
「入学の仕方を教えてほしい」
「どういう場合に受験が認められるのか」
早大大学院のスポーツ科学研究科への挑戦を表明していた桑田真澄さん(40)が2009年1月28日、修士課程1年制の合格者24人の中に入った。同大広報課によると、高卒の学歴での挑戦が報じられたころから、こうした問い合わせが相次いでいるというのだ。
今回の同研究科入試では、競艇のトップレーサーとして活躍中の江口晃生さん(43)も、高卒の学歴で受験して合格。桑田さんとトップスポーツマネジメントコースのクラスメートになることになった。いずれにせよ、高卒で大学院に合格したと報じられるのは、極めて珍しいことだ。
文部科学省の大学振興課によると、高卒の学歴では「基本的には、入学資格はない」。とはいえ、学校教育法の施行規則で、大学による個別入学資格審査にパスした人も大学院の受験資格があると定められている。早大に限らず、どこの大学でも「高卒大学院生」がいてもおかしくないわけだ。
では、どんな人なら合格できるのか。
文科省では、「個々の大学が、大学卒と同等以上の学力があると認めた場合です。通常の大学院入試より厳しくなります」と説明する。ただ、その学力をどのように量るのかについては、定量的な基準はなく、個々の大学の審査によるという。
早大においては、高卒での出願資格について、「これまでの経験や論文などの課題、面接などを勘案して、大卒相当の学力かどうかを決めます。個人によって経歴はまちまちなので、一つの尺度だけで量ることはありません」(広報課)としている。
「大学教育の価値そのものを否定する行為じゃないのだろうか」
早大のスポーツ科学研究科では、出願資格として、さらに3つの条件がある。日本代表などのトップレベルの実績3年以上、スポーツビジネス関連企業などで通算5年以上の実務経験、弁護士などの資格といったものだ。早大広報課では、「一般の受験とは違うコース」と説明している。
早大によると、こうした条件下で、高卒の企業経営者なども過去に合格しているという。
ただ、出願資格をクリアし、さらに入試にも合格しなければならないだけに、一般の人が高卒の学歴で合格するのは相当大変そうだ。
野球界で経験豊かな桑田真澄さんも、合格した早大には結局行かずプロ入りしただけに、学力面で四苦八苦したらしい。スポーツ紙などによると、入試面接では高度に専門的な質問が出て、受け答えが「しどろもどろになった」という。「手応えがなかった」「自信なくした」などの発言を連発し、合格について、「レフトフライが、風が吹いてホームランになった」と表現している。
ミクシィの日記を見ると、桑田さんの合格には、「頑張って入ったのだと信じます」と祝福する書き込みは多い。一方で、大学で学んでいないだけに、不思議がる声も出ている。
中には、「結果はどうだったかわからないけど元プロ野球選手だから合格させただけのようにしか思えない」「自分たちがやっている大学教育の価値そのものを否定する行為じゃないのだろうか」などと、高卒で合格させる選考のあり方に疑問の目を向ける書き込みもあった。
これに対し、早大の広報課では、「世間的に有名だからいいわけではありません。(桑田さんらの合格は)あらかじめ決まっていたわけではなく、厳正に選考した結果です。高卒で入学させたからといって、大学教育のレベルが落ちるということもありません。入った後に、どんな研究をするかということの方が大事だからです」と理解を求める。文科省大学振興課でも、「高卒の学歴で入学させたからと言って、大学教育の質が下がるとは考えていない」と話している。