「8000億円」ともいわれる缶コーヒー市場で、メーカーの「品質競争」が激しくなっている。日本コカ・コーラの「ジョージア」はコーヒー豆の品質にこだわり、「ワンダ」を展開するアサヒ飲料は抽出の新技術を開発、といった具合で、メーカー側は品質を向上させながら年にいくつもの新商品を生み出している。熾烈ともいえる競争の背景には何があるのか。
「総合評価」トップは「ジョージア」に
缶コーヒー満足度ランキング総合TOP5(オリコン調べ)
オリコンが2008年12月26日から09年1月5日までの期間、「1か月以内に缶コーヒーを飲んだ」20~50代の男女合計1000人を対象に「缶コーヒー」に関する満足度などのインターネット調査を実施したところ、日本コカ・コーラの「GEORGIA(ジョージア)」が総合評価でトップとなり、79.87点でランキング1位に輝いた。2位以下はサントリー「BOSS(ボス)」(77.25)、キリン「FIRE(ファイア)」(74.63)、JT「Roots(ルーツ)」(73.83)、アサヒ「WONDA(ワンダ)」(72.10)の順となっている。
「味」「バリエーション」「コストパフォーマンス」「品質」「製法」の5項目でポイント集計され、「ジョージア」は4項目で他ブランドを抑えて最高得点を獲得しているが、ここで注目したいのが「品質」。これについては、各メーカーが特にこの数年、力を入れている分野で、アロマ(焙煎の熱で生じるコーヒー特有の香り)の研究や豆の選定など、熾烈な闘いが展開されている。
なぜ、「品質」なのか? 日本コーヒー飲料協会の事務を受託している(社)日本果汁協会によると、「消費者がより高品質なものを望んでいることに加え、コンビニの存在も大きい」という。
「缶コーヒーの販売の8割方は自販機ですが、あとの2割がコンビニで、それが増加傾向にある。コンビニ側は缶コーヒーに限らず売れる商品を置こうとするし、売れないとみると厳しくはじきますからね。当然、メーカーも広告活動とともに品質の面でも努力しなければならない。いわば、新商品・リニューアル合戦の様相を呈しています」
メーカー側の状況をみてみよう。
JTフーズが2000年から販売する「ルーツ」では、独自のものとして「HTST製法」を取り入れている。いわゆる高温短時間製法だ。
「コーヒーは温め続けると味や香りが落ちるといわれるように、缶コーヒーも加熱殺菌時間は短いほうがおいしいのです。ルーツでは缶の形状を工夫し、熱効率を上げることで独自の製法を実現させました」(同社お客様相談室)
また、「ワンダ」を展開するアサヒ飲料では、「コロンビア・スプレモ」など高級豆を導入するともに、「ワンダ」独自の新製法「抗酸化高低温2段抽出(特許出願中)」を07年秋の「ワンダ新モーニングショット」から導入している。この新技術は、同社の説明によると「最初に高温での蒸らし工程を入れてコーヒーのうま味成分と良質な香りを抽出し、続いて低温で時間をかけてドリップすることで、雑味や渋味のないクリアなコーヒーが抽出できる」のだという。
ジョージア「豆のいいところを残しながら進化」
豆へのこだわりを語る日本コカ・コーラ マーケティング本部の島岡さん
豆、抽出法、焙煎法など、各メーカーはそれぞれに工夫を凝らし、新商品の開発に取り組んでいるのだ。そうした「品質競争」の中でトップに支持された「ジョージア」はどんなこだわりを持っているのだろうか。
「ジョージア」のデビューは1975年。以来、原料(特に豆)や製法にはかなり気を使ってきた。現在、販売中の商品の例でいうと、100%ブラジル産豆を使用している「ヴィンテージレーベル」では、通常1週間~10日にわたり豆の熟成を行うところを、約3倍の30日間も費やしている。それも、果実のままの熟成なので、コーヒーの甘みやうまみが向上するそうだ。
また、「エンブレムブラック」では、いれたての"しっかりした味わい"を手に入れるために、最初に出てくるおいしいところだけをぜいたくにドリップ。さらに、ジョージア独自に採用する「脱酸素いれたてパック製法」によって、逃げやすいコーヒーの風味をそのまま缶の中に閉じ込めている。
日本コカ・コーラのマーケティング本部コーヒー担当・島岡芳和さんはこう語る。
「豆のいいところを残しながら、香りを含めて品質全体を進化させたいと考えています。その象徴が94年から展開し、09年1月26日からリニューアル発売する『エメラルドマウンテンブレンド』シリーズです。エメラルドマウンテンというのはコロンビアのコーヒー豆の名前です。これは、、コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)による数多くのチェックプロセスを経て、コロンビアコーヒー総生産量の約1%が認定される大変希少な高級豆です。。そうした高いクオリティーを少しでも多くの方に楽しんでいただければうれしいですね」
昨今は、いわゆるスタンダードタイプに「無糖」や「微糖」という分野も加わり、08年の缶コーヒー市場は前年比1.5%増と好調(食品マーケティング研究所)。メーカー各社の競争は今後、さらに熾烈を極めそうだ。