日本郵政の保養・宿泊施設「かんぽの宿」のオリックスへの売却問題が、郵政民営化を推進した竹中平蔵慶応大学教授(元総務相)と鳩山邦夫総務相の論争に発展し、物議を醸している。竹中氏の参戦と鳩山総務相の応戦に続き、鳩山総務相は日本郵政に20項目余りの質問状を送付。かんぽの宿売却問題の決着は、さらに混とんとしてきた。
「ほとんど言いがかりのようなものである」
論争の発端は、竹中氏が2009年1月19日付の産経新聞朝刊に発表した「ポリシー・ウオッチ」なる寄稿論文だ。この中で竹中氏は「かんぽの宿は郵政にとって『不良債権』であり、この処理が遅れれば国民負担が増大することになる」と指摘。「当たり前の話だが、民間の保険会社がホテル業を営むことはあり得ない」などと論じた。
また、政府の規制改革会議の議長を務めたオリックスの宮内義彦会長について、竹中氏は「郵政民営化に同会議が関係したことはない。基本方針を決めたのは経済財政諮問会議であり、いつくかの委員会も作られたが、宮内氏がメンバーになったことはなかった。同氏が郵政民営化にかかわったというのは、ほとんど言いがかりのようなものである」と、鳩山総務相を批判した。
これについて、鳩山総務相は翌20日の閣議後会見で、とうとうと反論した。鳩山総務相は「(竹中氏は)生命保険会社がホテルをやるわけないとか書いてありますが、かんぽの宿はかんぽ生命の資産ではなく、日本郵政の施設でございますので、それは正確に把握してもらいたい」と口火を切った。
さらに「竹中氏は『郵政民営化のプロセスに規制改革会議が関係したことはない』と言い切っておられますが、確かに答申のようなものは出ていないかもしれませんが、前身である総合規制改革会議において、宮内さんが議長を務めておられる同会議において議論されておられました。その事実は無視してほしくない。まるで宮内さんが郵政民営化の議論に全くノータッチだったようなことを平気で書かれては困るのです」と指摘した。鳩山総務相は「上げ足を取るようなことはしたくない」と断りながらも、逐一の反論を怠らなかった。
「入札は完璧なものだったのか」鳩山総務相が指摘
鳩山総務相の反論は「03年10月7日に郵政民営化の問題は経済財政諮問会議に一本化された」など具体的で、議事録の精査など理論武装の跡がうかがえた。さらに新聞各紙が社説などで「公正な入札」で落札したオリックス不動産に大臣が横やりをはさむのはおかしいと主張していることについても、鳩山総務相は「(新聞各紙は)入札が完璧なものだったという論点でお書きになっているが、そうであるか、そうでないかは今後の調査を待たねばなりません」と、思わせぶりな発言で、新聞各紙の論調にも矛先を向けた。
鳩山総務相が23日に日本郵政に対し質問状を送付、日本郵政は回答した。質問は「入札の在り方や売却価格の算定など、私なりの疑問点や質問したいことを20項目余りまとめた」もので、細かい質問内容、回答は明らかになっていないが、鳩山総務相は自民党内の特定グループと周到な準備をしているとみられ、今後の展開が注目される。