未曾有の不況下のもと、コスト削減につとめている企業は多い。人件費の見直しから始まって、小さいものでは電気や文房具などの消耗品の節約がある。そんな中、話題になっているのは、三菱自動車の異例ともいえる取り組みだ。
社内の蛍光灯を一部取り外す
三菱自動車は2008年末から、コスト削減策のひとつとして本社への来客に対し、コーヒーや紅茶を出すのを取りやめた。コーヒーはこれまで、社内の喫茶店で提供されていたカップに注がれたものを、来客者に運んでいたという。
また、社内の蛍光灯を一部取り外した。「取り外した蛍光灯の本数までは答えられない」(広報部)としているが、これまでにも昼休みや定時後の消灯にはつとめていた。そして、文房具の購入も余剰が多かったことから、原則購入を控え、再利用を増やしているという。コスト削減の取り組みを今まで以上に強めたかっこうだ。
企業は経費削減の動きを強めているが、主要企業で来客へのコーヒー、紅茶のサービスをやめた例はないようだ。もちろん、このケチケチ作戦にも賛否両論がある。ただ、ネットでは否定的な意見が多く、2ちゃんねるでも、
「インスタントでいいから出せよw」
「こんなケチ臭い所から買えるか」
「まだまだ削減できるところ他にもあるだろ」
「さすがに来客して来た人に茶もないのはまずかろう」
などと書き込まれた。
また、個人のブログや掲示板も、「そのうちディーラーでもコーヒー出なくなったりして」「自動車業界がどんどん堕ちていってるなぁ」「タイヤの数は減らさないで下さいね」などと不安視する向きは多い。
企業のコスト削減指導に取り組んでいる、あるコンサルタント会社の代表は匿名を条件に、「小手先のやり方はどうか。枝葉末節の部分をいくらつついても……」と指摘する。特に、蛍光灯の取り外しは、社員のモチベーションを絶対に下げるという。
「やり方はほかにもあると思う」
「ただ、このメッセージを社内の全社的なポリシーとして、全社員が共有しているのなら話は別です。通常、コスト削減に取り組む場合、無駄を減らそうという社員の行動が評価され、そして、給料に反映されなくてはうまくいかないものです」
コーヒー提供の取りやめについても、
「お客さまのことをどう思っているのか。もてなしの心は無いのかと思われても仕方がないでしょう。しかし、やり方はほかにもあると思うのです。コーヒーの提供ならば、社員がポットからくんで運ぶだけでも良い。もっと業務自体を見直すことが先決です」
と否定的だ。
一方、三菱自動車広報部は、自社の取り組みについて、「仕事の支障をきたさない範囲内で取り組んでおり、当面いつまで実施するかは決まっていない。また、生産現場での苦労を考えると、(オフィスでも)率先してやっていかなくてはならない」と話している。