新聞、テレビの没落が経済誌や週刊誌の特集になり、それに代わる新メディアが論議の的になっている。ある識者は、輪転機といったインフラを切り離した「ローコスト・メディア」が次代の姿だというのだ。メディアはどう変わるのか。
大阪の準キー局では「経営統合の動き」
週刊東洋経済の特集記事
「民放のドンが激白!!」。
2009年1月26日発売の週刊東洋経済をめくると、何かを睨むような厳しい表情の顔が目に飛び込んでくる。日本テレビの氏家齊一郎取締役会議長だ。そのインタビュー記事では、テレビ広告はさらに減るとして、民放キー局の中でも生き残るのは2~3社、という衝撃的な見方を披露している。
東洋経済では、この号で、40ページにもわたる「テレビ・新聞 陥落!」というセンセーショナルな大特集を組んだ。そこでは、テレビ局なら、広告減収や地デジ投資負担から、何らかの再編が進むと予測。大阪の準キー局同士では、すでに経営統合の動きが見られ、「マスコミ集中排除原則」に守られているキー局にも飛び火する可能性があるというのだ。新聞業界でも、テレビ局を巻き込んだ再編が進むとしている。
さらに、突っ込んだ見方を披露したのが、経済学者の池田信夫さんだ。
池田さんは、輪転機や放送中継局といったかつての資産は、今や新聞社やテレビ局の負債になっていると指摘。新しい時代は、こうしたインフラを切り離して、コンテンツ・プロバイダーのように特化した「ローコスト・メディア」が主流になると予言している。
池田さんは、1月25日のブログ日記で、インターネットが電波利権などを破壊して、価格競争をもたらしているとする。そして、既存メディアのコスト削減には限界があり、ネット企業にチャンスだと言っている。いわば、テレビ局や新聞社は、消滅しかねないということだ。
将来的には、コンテンツ有料化に向かう?
仮に、テレビ局や新聞社がインフラを切り離してローコスト・メディア化に成功したとしよう。現状では、しかし、十分な収益性にはほど遠い。ネット上では、新聞社のニュースサイトも、紙媒体の没落を補う存在になっていない。広告依存型では、多くのユーザーを持つ巨人ヤフーが独り勝ちの様相になっているのだ。
では、どうすれば、生き残ることができるのか。
ネット上のビジネスモデルに詳しいインヴィニオ取締役の高井正美さんは、将来的には、コンテンツを有料化せざるを得ないと指摘する。
「広く大衆に訴えることができるコンテンツなら、広告としてペイするのでスポンサーが付きます。しかし、顧客の好みが分散して、何千万人が見るようなコンテンツは成り立たなくなっており、広告モデルが崩壊しています。そんな中でバラエティのような低予算番組を量産すれば、コンテンツがチープになって次第に飽きられていくでしょう。いずれは、よいものを作ってお金をもらう課金モデルに転換せざるを得なくなります」
消費者全体のマスマーケットには無料化モデルが当てはまっても、限られた消費者のニッチマーケットには有料化モデルが合うという。広告効果が得られないため、有料化で制作費を回収せざるを得ないからだ。いわば、視聴料を取るBS、CS放送のようなあり方だ。
一方、テレビ局や新聞社では、ビジネスモデル転換への動きは鈍いようだ。日本テレビの氏家議長は、東洋経済のインタビューで、広告減収の原因について、流通業界の寡占化で大衆向けの広告の重要性が低下しているため、などと説明。ネット広告も衰退しつつあり、テレビ局はどれだけよい番組を作れるか本業回帰が重要だと主張している。