銀行の「貸し渋り」止まず 業績悪化で選別融資始まる

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   銀行の貸し渋りが止まない。世界的な金融危機をきっかけに、大手銀行から中小の地域金融機関まで、業績が目立って悪化しているからだ。株価下落で保有している株式の処理損失が膨らんでいるほか、融資先企業の経営悪化で不良債権処理損失もかさんできた。貸し渋りについて、大手銀行の関係者は「企業融資を伸ばさないことにはやっていけない。貸し渋りなどない」と否定するが、年度末に向けた企業の資金繰りは厳しくなる一方だ。

大手銀行の貸し出しは大企業向けが伸びる

   あるメガバンクの幹部は「貸し出しは伸びている」といい、意図的な貸し渋りを否定する。全国銀行協会によると、2008年12月末の全国銀行(123行)の貸出金残高は434兆4126億円。前年同月に比べて4.6%増、前月に比べても2.0%増えた。なかでも大手銀行は、前年同期比5.2%、信託銀行も同6.5%の伸びと突出している。

   一方、09年1月22日に日本銀行が発表した主要銀行の貸出動向調査では、08年10-12月の資金需要判断DI(指数)が急速に上昇。企業の資金需要、しかも大企業ほど旺盛だったことがわかった。

   08年12月に、大手銀行の貸し出しが急速に伸びたのは大企業の資金ニーズに応えたから。市場の混乱でコマーシャルペーパー(CP)や社債といった直接金融での資金調達がむずかしくなり、大企業は「予防的に手元に資金を置いておこう」、「資金繰りに余裕を持ちたい」と動き始めた。

資本増強むずかしく銀行に貸し出し余力なし

   世界的な景気後退で、日本でもトヨタ自動車やソニーなど名だたる大企業が生産調整や人員解雇に踏み切るなど、赤字転落の危機に陥っている。メガバンクなども例外ではないし、すでに地方銀行の一部には09年3月期の業績見通しを下方修正する動きが出てきた。株式評価損の計上や貸出債権の取立て不能を公表する銀行も相次いでいる。

   中小企業の貸し渋り防止を狙いとする改正金融機能強化法に基づく公的資金の申請には、いまのところ第二地銀の札幌北洋ホールディングスと南日本銀行(鹿児島県)の2行が手を挙げた。金融庁は、中小企業向け融資を伸ばせば、不良債権が多少増えても大目にみるし、また預金増による自己資本比率の低下にも目をつむる、と「アメ玉」をちらつかせて利用を促す。1月26日には香川銀行と徳島銀行が経営統合を発表。生き残りをかけた再編劇が始まった。

   業績悪化による自己資本比率の低下で貸し出し余力がなくなることを防ごうと、メガバンクも08年11~12月にかけて相次ぎ資本増強に動いたが、「そのときより、さらに状況が悪くなっている」(大手銀行の幹部)。日銀が資金支援の用意をしているものの、「増資したばかりで、追加についてはしばらく身動きがとれない。年度末に向けて資金需要が増しても、そのニーズに応えられないのではないか」という。

   1年前までは過去最高益などという景気のいい企業もあったのに、企業の業績はまさに急落。「売上げが減り、在庫は残り、いまは手元の自己資金を取り崩しながら凌いでいる企業ばかり」(前出の大手銀行幹部)で、経営が苦しくなるのはむしろこれから。手元を蓄えておいた資金が目減りして、辛抱が利かなくなった企業が融資を求めてくる。

   別の大手銀行の関係者は「大企業でも二極化してきた」という。今後は容易には貸せず、企業の財務内容を吟味した「選別融資」がはじまりそうだ。

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