横浜市が「小中一貫教育」をすべての市立小中学校で実施することを決めた。参加する学校は500校近くと大規模だ。いったい小中学校の一貫教育とは何か。横浜市の場合、どういうシステムになるのか?
狙いは小中学校教員の連携
横浜市は2012年までに491の中学校とあわせて、小中一貫教育を実施することを決めた。狙いは小中学校の連携。義務教育9年間の「なめらかな接続」に目的がある。これまで、全く連携のとれていなかった小学校と中学校の教員らが行き来して、学習指導や生活指導にあたる。
実は、横浜市では08年度から、一貫教育の「実践推進校」として小学校57校と中学校28校で実施している。これらの連携が今後、横浜市内ではどこでも行われるようになるのだ。
たとえば、横浜市立霧が丘小学校・中学校。小学校の教員が中学校へ出向き、数学につまずいていた生徒を対象に授業をした。また、中学生が小学校に行ってサッカーを教えたり、文化祭を一緒にしたりした。そうした交流を深めたところ、不登校や保健室登校をする生徒がゼロになったという。
「いままで連携がなかったことから、中学にあがって勉強の内容が難しくてつまずいてしまったり、また、人間関係で悩んだりしたことが不登校となる原因になっていたと思います。これらの面が解消できるのでは、と期待しています」(横浜市教育委員会・授業改善支援課長、大矢三郎さん)
また、2009年度から小学校高学年では英語教育が開始される。それにともなって、英語の授業のときには、中学校教員が授業をサポートすることも増えそうだ。
「中学進学への不安が減った」
もっとも、自治体による小中一貫教育はこれまでにも例がある。有名なのは東京都品川区。06年から独自のカリキュラムを組んで、「英語科」や「市民科」といった新しい学習を取り入れた。また、義務教育の6・3制を廃止して、9年間を4・3・2年に区別している。「品川区立小中一貫校日野学園」のように、同じ敷地内に一貫校を設立したケースもある。
広島県呉市でも06年から全市的に、28校で小中一貫教育に取り組んでいる。中学から小学校へと乗り入れて授業をしたり、合同で授業をしたりしている。科目にはばらつきがあるが、隣り合った学校では頻繁に、離れている学校でも定期的に交流が行われている。このような取り組みから3年がたつが、「交流が増えたことで、中学校への進学の不安が減ったという児童が増えている、という報告が多い(呉市教育委員会)」など、一定の効果があるようだ。そのほかにも、北海道鹿追町、岐阜県多治見市、東京都三鷹市などでも同様の取り組みが行われている。
文部科学省教育制度開発室によれば、各自治体では、教育課程の特例などを活用しながら、それぞれの事情にあった取り組みをしている例は多いという。 同省の担当者は「品川区のように、小中校を同じ校舎内に設立するような大きな取り組みもありますが、小中校間の教員が行き来しやすいようにした例は多くあります。いずれの場合も、『子どもたちの学習がうまくいくように』との積極的な取り組みです。今後は、どういう効果があったのか、あるいは、課題があるのかについてみていきたいと思います」と話している。