「中学進学への不安が減った」
もっとも、自治体による小中一貫教育はこれまでにも例がある。有名なのは東京都品川区。06年から独自のカリキュラムを組んで、「英語科」や「市民科」といった新しい学習を取り入れた。また、義務教育の6・3制を廃止して、9年間を4・3・2年に区別している。「品川区立小中一貫校日野学園」のように、同じ敷地内に一貫校を設立したケースもある。
広島県呉市でも06年から全市的に、28校で小中一貫教育に取り組んでいる。中学から小学校へと乗り入れて授業をしたり、合同で授業をしたりしている。科目にはばらつきがあるが、隣り合った学校では頻繁に、離れている学校でも定期的に交流が行われている。このような取り組みから3年がたつが、「交流が増えたことで、中学校への進学の不安が減ったという児童が増えている、という報告が多い(呉市教育委員会)」など、一定の効果があるようだ。そのほかにも、北海道鹿追町、岐阜県多治見市、東京都三鷹市などでも同様の取り組みが行われている。
文部科学省教育制度開発室によれば、各自治体では、教育課程の特例などを活用しながら、それぞれの事情にあった取り組みをしている例は多いという。 同省の担当者は「品川区のように、小中校を同じ校舎内に設立するような大きな取り組みもありますが、小中校間の教員が行き来しやすいようにした例は多くあります。いずれの場合も、『子どもたちの学習がうまくいくように』との積極的な取り組みです。今後は、どういう効果があったのか、あるいは、課題があるのかについてみていきたいと思います」と話している。