オバマ米大統領の指名した財務長官のガイトナー・ニューヨーク連銀総裁が2009年1月22日、「大統領は中国が自国通貨を操作していると信じている」と述べ、中国側の反発を招いた。一方で、中国で「保有する米国債の残高を減らすべきだ」との議論が活発になっているという報道もあって、米国債は市場で大量に売られた。世界一の米国債保有国の中国は本当に売却に踏み切るのか。
政府のシンクタンク所長が米国債売却論
ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁の発言は、対中貿易赤字の拡大を背景に、オバマ政権が人民元の切り上げへ、圧力を強める可能性がある解釈される。これに反発した中国が今後米国債の購入を控えるとの懸念が高まり、債券売りが進んだ。
さらに、中国で「保有する米国債の残高を減らすべきだ」との議論が出てきた。米国が金融危機の対応で国債を大量に増発し、今後の価格下落が見込まれるためだ。中国社会科学院世界経済政治研究所の余永定所長は1月初めに中国紙上で、米国債が供給過剰になるリスクに触れ、
「米国債をある程度売り、ユーロや円の資産を増やすべきだ」
と指摘した、と伝えられる。
余永定氏は、中国政府のシンクタンクである中国社会科学院世界経済と政治研究所の所長であり、しばしば日本を訪問し、日本との交流も深い。
中国社会科学院は中国政府のシンクタンクであり、政府の政策決定機関と緊密な関係にある余所長は、その発言自体が政府の思惑を感じさせる。「2008年9月に中国は米国債を436億ドルも多く購入し、同時期に日本はむしろ128億ドルの米国債を売却した。中国は5850億ドルの残高で日本の5732億ドルを上回り、世界一の国債所有者になった」(余所長)。08年11月ごろから、これ以上の米国債を持つべきでないと余所長は主張している。その後もほぼ同様の話を繰り返している。
米国新政権を困らせて、中国が得するところがあるだろうか
米国債の問題については、08年12月4日と5日に北京で開かれた米中戦略経済対話の中でも議論されたと言われている。詳細は中国でもアメリカでも報道されていないが、「アメリカはこれ以上中国人民元の切り上げについて触れない。その一方で、中国もアメリカの金融安定に協力する」という内容で両国政府は合意したとされる。
北京にあるアメリカ問題の専門家は、
「アメリカの新政権はスタートしたばかり。オバマ政権自体が中国に難題を投げたわけではないし、中国もオバマ氏に困らせるつもりはないはず」
と答えた。
中国は、満期前の国債を多く抱えており、それを売って利益が出るかどうか。仮に、国債を売った米ドルをアメリカの社債、株などの購入に使うとする。それは現在の国債と比べて果たして安全だろうか。さらに米国新政権を困らせて、中国が得するところがあるだろうか。中国は売却に今のところ否定的だ。
(J-CAST 北京)