景気が急速に悪化し、消費者の「買い控え」「出控え」が進む。とにかく、店に来てもらおうとあの手この手で工夫をこらす。安く食べて飲める居酒屋チェーンでも値下げの動きが出てきた。先陣を切ったのはワタミだが、これを機に「値下げ合戦」へと発展しそうだ。
1杯あたりの値下げ幅は63円~105円
ワタミは居酒屋チェーン「和民」と「坐・和民」で、2009年2月9日からアルコール類を値下げする。需要が高い生ビールは、従来価格よりも13~17%安くする。和民では「サントリー モルツ生(中ジョッキ)」を63円値下げして418円に、坐・和民では「同 ザ・プレミアム・モルツ(中ジョッキ)」を105円下げて513円にする。また、和民でのみ、サワー類も100円安くして399円にする。
1杯あたりの値下げ幅は63円~105円。これにともない同社が負担する額は毎月1億円に上るが、同時にフードメニューも改定することで、「トータルでの客単価はそう変わらない」(広報担当者)とみている。
そうはいうものの、大幅な値下げに踏み切ったのは、客数が伸び悩んでいるためだ。同社が1月10日に発表した「近況報告」によると、グループ店舗(既存店575店)の客数は08年10月が97.4%、11月が96.8%、かき入れ時の12月でも98.8%と減っている。メニュー改定などで客単価は上がっており売上高は前年をキープしているものの、先行きが懸念される。
同社広報担当者は、
「値下げがお客様への刺激剤になることを期待しています」
と話す。
毎年、大手居酒屋チェーンでは春に基本メニューの改定を行う。今、検討を進めている段階で、競合の値下げは大きな影響を与えそうだ。
不況に比較的強いとみられる居酒屋も例外ではなかった
「白木屋」「魚民」「笑笑」を展開するモンテローザの広報担当者は、こう話している。
「もともと低価格戦略でやっており、消費者の節約志向にマッチしていると思っています。今のところ酒類などの値下げは考えていませんが、お客様が安さを求めているのか、それとも値段だけでなく、味、サービスも総合した価値を求めているのか、検証していかなければなりません」
「庄や」「日本海庄や」を展開する大庄。毎年5月頃に実施するメニュー改定に向けて、検討中だ。広報室の担当者は、
「値下げ合戦になるのではないかという懸念はあります。しかし、下げるのには体力がいりますから、何の戦略もなしに下げられません」
とし、しばらくは様子見だという。
外食不況は深刻で、東京商工リサーチによると08年1月~11月の飲食業の倒産件数は前年同期比7.2%増の682件。「平成で最多」だった。内訳は食堂、レストランなどの一般飲食店が486件。バー、キャバレー、ナイトクラブが106件。酒場、ビヤホールが84件だった。原因別では「販売不振」が489件で最も多く、全体の7割を占める。低価格メニューを提供し、不況下でも比較的強いとみられる居酒屋も例外ではない。外食産業の業界団体、日本フードサービス協会によると、居酒屋の客数は08年8月以降、連続して前年を下回っている。